7/2(木) 17:32配信
6月29日に発表された、中国・新疆ウイグル自治区における「強制不妊レポート」が衝撃的だ。中国共産党がウイグル人の人口を減らそうと、強制収容して不妊手術を受けさせる悲惨な実態が報告されている。
発表したのは、ワシントンDCにあるシンクタンク・ジェームスタウン財団で、ドイツ人研究者エイドリアン・ゼンツ氏らが現地でおこなったインタビューや公文書、これまでの報道をまとめたものだ。
中国は、かつて「一人っ子政策」で国民の出産制限をしてきたが、2016年の制度廃止以来、2人目の出産を許可し、取り締まりをゆるめている。だが、新疆ウイグル自治区では厳しい状況が続いているのだ。
3人目の子供を産んだあるウイグル人女性は、地元警察に呼び出され、地下で金属椅子に手足を拘束された状態で、銀行送金や電話のやり取りについて尋問された。後日、黒いフードをかぶらされ、拘束されたまま強制キャンプへ送られ、2カ月以上をここで過ごす。
釈放の際、キャンプ内のことを口外せず、宗教行事に参加しないことを約束させられた。ウイグル人の多くはイスラム教徒で、宗教行事に参加しないとは、文字どおり宗教を奪うことである。彼女は無料で不妊治療を提供され、断りきれずに手術を受けたという。
幼い3つ子を持つ女性は、エジプト留学から一時帰省したところを逮捕された。強制キャンプでは、4日間連続で睡眠を取らせない拷問を受け、髪を剃られた。
あるとき、椅子に拘束された状態でヘルメットをかぶらされ、そのまま感電させられた。この拷問で全身が激しく痙攣し、口から泡を吹き意識が遠のいていくなかで、「ウイグルは罪だ」という言葉を聞いた。
彼女のキャンプは60人の女性が1つの部屋に押し込まれ、睡眠は交替制。トイレはセキュリティカメラの前にあり、3カ月で9名が亡くなった。
よくわからない錠剤や液体を飲まされ、それにより失神する者、不正出血する者、生理の止まる者がいたという。アメリカの医師はこれを不妊処置だと断言している。
別の女性は、強制収容所に入る必須条件だとして、不妊具を装着させられた。彼女の罪は携帯にメッセンジャーアプリ「WhatsApp」をインストールしたというもの。4人目の妊娠10週目だったが、麻酔なしで堕胎手術され、今も後遺症に苦しんでいる。
さらに別の女性は、拘束中に何度も警備員たちにレイプされ、2回妊娠し、いずれも強制的に堕胎させられた。35歳以下の者は女でも男でも、レイプされたり性的虐待を受けたりしているという。たとえばチューイングガムを使って陰毛を抜いたり、唐辛子を入れた液体を局部に塗りつけるなどだ。
共産党のキャンペーンは、3人以上、ときには2人以上の子供を持つ女性を再教育するのが目的だが、対象者は妊娠可能な女性のほぼ2割に相当するという。
当初は、2019年までに郊外の8割の女性に不妊手術を施すのが目標だったが、実際ははるかに多く実施された。キャンペーンが始まってから、あるウイグル人地域における18歳から49歳の未亡人率と閉経率は2倍以上になった。新疆の人口増加率は著しく減っており、今年はほぼゼロに近いエリアもあるという。
人権団体の見積もりでは、こうした再教育キャンプに強制的に収容される人は、2017年以降、100万人から300万人に上り、ほとんどがウイグル人だという。そのうち75~90%が25歳から49歳までの男性だ。
政府はウイグル族の男性はテロリストの可能性があると喧伝しているが、 女性はファッションモデルの可能性があると持ち上げられ、お見合い結婚が急増。漢族の男性とウイグルの女性を結婚させることで、ウイグル文化を消し去ろうという目論見だ。
漢族には無料の家や土地、高給を約束し、ウイグル族の土地に多くの若者を移流させている。一方で、中国政府は新疆ウイグル自治区に多くの監視カメラなどを設置し、ウイグル人の監視を強めている。血液や声紋、顔認証データなどの膨大な個人情報が集められているそうだ。
レポートでは、あからさまな集団不妊治療は国連の定めたジェノサイド条約第2条に相当するかもしれないと指摘しているが、中国政府は人権侵害を否定している。
こうした中国の横暴に対し、アメリカでは、ウイグル弾圧に関わる中国高官に制裁を科す「ウイグル人権法案」がほぼ全会一致で採決され、大統領も6月17日に署名した。7月1日には、4つの関係省庁が、ウイグルで中国政府寄りのビジネスをおこなう米国企業へ警告を出した。
同日、ニューヨークではウイグルに関連すると見られる13トン(8600万円相当)の人毛かつらが差し押さえられた。ウイグル人女性は習慣的に髪が長く、強制収容所で剃られたものかもしれない。中国は毎年6400億円ほどのヘア製品を輸出しているが、ウイグル人女性の犠牲の上に成り立っている可能性が高いのだ。
アメリカと中国の溝が深まるなかで、ウイグルがらみの中国への制裁は今後さらに勢いを増すだろう。
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