習近平の横暴をアメリカも警戒…中国の「尖閣侵入」に今こそ怒るべき理由

習近平の横暴をアメリカも警戒…中国の「尖閣侵入」に今こそ怒るべき理由
7/17(金) 8:01配信

 中国海警局の公船が連日、日本の尖閣諸島周辺に侵入している問題を先週のコラムで取り上げたところ、大きな反響があった。そこで、今週も続きを書こう。もはや、一刻の猶予もない。政府は政府職員の尖閣上陸など、行動で日本の領有権を明確に示すべきだ。

 中国は7月14日、一段と大胆な動きに出た。海警局の武装公船4隻が一度に尖閣諸島沖の領海に侵入し、約2時間にわたって航行したのだ。これで尖閣周辺への侵入は連続92日、領海内への侵入はことしで14回目になった。

 海上保安庁のサイトによれば、16日16時現在で15日の侵入は確認されていない(https://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/senkaku/data_R2_7.pdf)。連続記録は途絶えたかもしれないが、油断は禁物だ。いずれ、中国が再開するのは確実だろう。

 日本国内が新型コロナウイルスの感染第2波をめぐって、大騒ぎしている間隙を突いて、中国は日本と米国の出方を見極めようとしているのだ。日米の対応が甘いとみれば、中国はさらに大胆な行動に出るに違いない。

 緊迫する尖閣情勢を受けて、私は7月14日、本サイトの同僚コラムニスト、高橋洋一さんと配信しているYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一の『NEWSチャンネル』」に、前自衛隊統合幕僚長の河野克俊さんをお招きし、現状をどう見るか、話を聞いた(https://www.youtube.com/watch? v=FdOgU28jGfc&list=PL6vmlngLTe5BJ1p8szg8TDi48pBP-PRxu)。

 自衛隊制服組のトップ経験者だけに、河野氏の話は具体的で、かつ危機感に満ちていた。ぜひ、番組を視聴していただきたいが、ここで、河野氏の発言のポイントをいくつか紹介したい。YouTube番組だけにとどめておくには、あまりに貴重であるからだ。以下、〈〉内は河野氏の発言を示す。

香港の次は尖閣諸島が狙われる
習近平中国国家主席[Photo by gettyimages]

 河野氏が最初に指摘したのは〈中国は米国の出方を見極めようとしている〉という点である。日米安全保障条約第5条は「日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対して「共通の危険に対処するよう行動する」と定めている。

 つまり「日本の施政下にある尖閣諸島が中国に武力攻撃されれば、日米が共同して防衛に当たる」という規定だ。逆に言えば、米国が尖閣防衛に動くかどうかは、日本と中国の〈どちらが尖閣諸島の施政権を確保しているか、による〉。

 もしも〈中国が施政権を確保しているなら、5条の適用はなくなる〉。そこで、中国は〈尖閣諸島を支配しているのは自分たちと米国に見せつけるために、日本の漁船を追い回している〉と河野氏はみる。彼らは「法執行しているのは中国」という状況を作ろうとしているのだ。

 現地では、海上保安庁と自衛隊ががんばって、中国公船を押し返しているが〈このまま押し込まれると、中国は米国が出てこないと誤解する恐れがあり、武力行使する可能性がある。私は危機感をもっている〉。

 尖閣だけではない。私は7月3日公開コラムで、中国が4月以来、ベトナム漁船への衝突・沈没事件や南シナ海での行政区設置、さらにヒマラヤ山脈国境でのインド軍との衝突など、急速に行動を過激化させている点を背景として指摘し、河野氏の見方を聞いた(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73776)。

 河野氏は、中国にとって〈香港と台湾、尖閣諸島の3つの問題は連動している〉と語った。この3つは、中国が防衛ラインと称している第1列島線(日本の九州から台湾沖、南シナ海に至るライン)の中国側にある。河野氏は香港が落ちたいま、次に危ないのは〈尖閣ではないか〉と指摘した。

 〈中国は海洋戦略を完結させるために、香港の1国2制度は絶対に認めるわけにはいかない。台湾に手を出すと、米国が関与する可能性があり、国民も住んでいるので、様子を見ている。次に狙うのは、どこかと言えば、一番やりやすいのは尖閣ではないか〉

 河野氏は政府職員も置かず〈手つかずの尖閣は、中国に「ここはやれるぞ」と誘惑を与えているようなものだ〉と危機感を顕にした。では、どうするか。河野氏は〈灯台職員を置く。あるいは、治安を守るという理由で海上保安庁か警察の職員を置く〉案を述べた。

 これに対して、高橋洋一さんは「海洋生物調査を理由に、外国の専門家を招待し、日本政府が彼にビザを発行する」、あるいは「尖閣諸島の一部で、使われていない射爆場で米軍に演習してもらう」案を提案した。高橋さんは数年前から射爆場活用案を提唱している(たとえば、https://diamond.jp/articles/-/98422)。

 仮に、日本政府がこのまま海保任せにして、中国が先に尖閣諸島に上陸したら、どうなるか。〈上陸したのが漁民なら、海保か警察が保護してお帰り願う。だが、軍隊だったら防衛出動という話になる。いずれにせよ、政治の判断だ〉

 高橋さんは「上陸の前に、日本漁船の拿捕があるのではないか」と指摘した。中国の立場からは「領海内での違法操業を取り締まった」形になる。そうなると〈尖閣諸島で施政権を行使しているのは、中国〉という話になりかねず、日本に厳しい展開になる。

 米国が介入する根拠である、安保条約上の「日本の施政下にある領域」という前提が崩れてしまうからだ。漁船の拿捕から、さらに進んで尖閣上陸を許すような展開になったら、まさに竹島が韓国に実効支配されてしまったように、尖閣は中国に奪われてしまいかねない。

 私は2人の議論を聞いて「いままさに日本は竹島以来、最大の危機を迎えている」と実感した。折から、来年2021年は「中国共産党創立100周年」である。すでに香港は落ちた。イベント重視の習近平政権は来年までに、尖閣諸島に対して一層大胆な行動を起こす可能性がある。

中国の「嫌がらせキャンペーン」を許すな
ポンペオ米国務長官[Photo by gettyimages]

 河野氏は地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備停止や敵基地攻撃能力の保持問題などについても、率直に見解を語ってくれた。イージス・アショアは、河野氏が現役の統幕長だったときに配備を決めたシステムである。一聴に値する。

 尖閣問題の重要ポイントである領有権問題については、米国のマイク・ポンペオ国務長官が7月13日、示唆に富む発言をしたので、紹介しておこう。南シナ海・南沙諸島のミスチーフ礁とセカンド・トーマス礁について、フィリピンの主権を認めたのだ(https://www.state.gov/u-s-position-on-maritime-claims-in-the-south-china-sea/)。

 ポンペオ長官は声明で「中国が主張している南シナ海の権益は完全に不法であり、彼らの周辺国に対する嫌がらせキャンペーンも不法だ」と語った。そのうえで、とくにミスチーフ礁とセコンド・トーマス礁について「完全にフィリピンの主権と管轄権下にある」と明言した。

 これまで他国の主権(領有権)問題では、関係国の紛争に巻き込まれるのを避けるために、米国は慎重に中立的立場を選んできたが、今回の声明で、中国の無法を許さない姿勢を明確にした形である。

 尖閣諸島についても、米国が同じように踏み込むとは限らないが、先週のコラムで紹介したように、ポンペオ氏は7月8日、中国による尖閣周辺での領海侵犯に言及し「世界はイジメを許すべきではない」と語っている(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73950)。

 日本が尖閣諸島問題で、いま具体的な行動を起こしても、米国が顔をしかめるとは思えない。逆に、いま行動を起こさなければ、何か事が起きた後で日本が米国を頼っても、突き放されてしまうかもしれない。そうなったら、政治の不作為が招く最悪の展開である。

長谷川 幸洋(ジャーナリスト)

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