日本の保守層を狙う中国のサイバー部隊「五毛党」 ソフトイメージでだましつつ「チベットの弾圧はウソ」「安倍支持だけど…」

日本の保守層を狙う中国のサイバー部隊「五毛党」 ソフトイメージでだましつつ「チベットの弾圧はウソ」「安倍支持だけど…」

5/22(金) 16:56配信

 【日本復喝!】

 「五毛党」と呼ばれる中国のサイバー部隊をご存じだろうか。正式名称は、「網路評論員(インターネット・コメンテーター)」である。

 国内外のネット上で、中国共産党に有利な世論を醸成することを狙う世論誘導集団で、「ネット水軍」とも呼ばれる。中国共産党宣伝部の声を広げ、彼らにとって都合の良いストーリーを語るのが目的だ。

 一般人を装い、ネット上のコメント欄やWeChat(微信)などを監視しながら、党に有利な書き込みや批判的なコメントの摘発を行う。人権や領土、民族といったキーワードを使い、中国共産党と異なる意見を持つ組織や人物を集団で徹底して罵倒したり、レッテルを貼ったりし、社会的に引きずり下ろすことも狙う。

 「五毛党」という名称は、中国共産党が当初、コメント1本につき、五毛(1毛=1・5円)支給していたことによる。2004年ごろから「五毛党」と呼ばれるようになった。最近、値段が上がって「八毛党」になったとか、ならないとか。

 15年時点で1050万人いるとみられ、中国共産党政権によるSNSへの「やらせ書き込み」は年間4億8800万件に上るという。

 日本の公安関係者によると、日本における五毛党の書き込みで特徴的なのは、「安倍晋三首相支持」や「反習近平」といった保守層が好みそうなキーワードを駆使し、中国共産党への警戒心を持っていると思われる保守層の関心や注意を引くというものだ。

 日本の保守層を取り込んで警戒心を解き、自分たちの主張に同調するように誘導する手法である。アニメや女性のアイコン、壁紙などを使って近づき、ソフトイメージでターゲットをだましつつ、取り込みを図る作戦なのだという。

 花に擬態したハナカマキリが、花に近づく昆虫を捕食する姿に似ている。

 私の手元に五毛党とみられるリストがある。公安関係者から独自に入手した内容は、「安倍支持。中華圏関連のつぶやきが多い。東アジアの平和と繁栄、日中友好路線を支持」「チベットの弾圧はウソ、チベット人より」「安倍支持。でも、度を超えた反中、反韓には反対」など…。

 ルアーで魚を釣るように、ネットにいる自称保守や無党派層への接近を図る。彼らの狙いは、中国共産党を敵視し、批判したりするターゲットの「つるし上げ」だから厄介だ。そこは日本でも中国国内と同様だ。

 五毛党は、元は緩いネットワークで、投稿者らはパートタイムで働くアルバイトに過ぎなかったが、現在はかなりの数がフルタイムで統一的に行動している。

 米ハーバード大学研究チームが13年、中国のインターネット検閲について発表した調査によると、検閲で最も多いのが、大衆行動を呼び掛けるような投稿の押さえ込みだという。

 つまり、中国当局が最も恐れているのは、個人の政権批判よりも、天安門事件や香港市民デモのように政権転覆につながりかねない人民の集団行動を呼び掛ける投稿なのである。

 新型コロナウイルスをめぐる米中両国の情報戦が熱を帯びている。機会を見て、「五毛党と米情報機関の戦い」の内幕を紹介したい。

 ■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『日本が消える日』(ハート出版)、『静かなる日本侵略』(同)、『日本人はなぜこんなにも韓国人に甘いのか』(アイバス出版)など。

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