中国・習近平の「尖閣強奪」、ここへきて「日本反抗」のターン到来へ…!
8/24(月) 6:31配信
中国で禁漁明け、今年の動きは
沖縄県の尖閣諸島周辺における情勢に関連し、中国が東シナ海に設定している休漁期間が8月16日に明けて以降、日本政府は中国海警局の公船(哨戒船)や中国漁船の動きに神経をとがらせている。
2016年の同時期には、300隻もの漁船が尖閣諸島周辺の海域に押し寄せ、海警局の哨戒船もこれに合わせて最大15隻がこの海域に集結した。海上保安庁が公表した平成28年10月18日の文書「平成28年8月上旬の中国公船及び中国漁船の活動状況について」によると、
「平成28年8月5日、約200~300隻の中国漁船が尖閣諸島周辺海域に見られる中、中国漁船に続いて中国公船1隻が尖閣諸島周辺領海に侵入した。その後、中国公船が中国漁船に引き続く形で領海侵入を繰り返す事象が見られた。この8月5日、7日、8日及び9日の4日間で、領海に侵入した中国公船は延べ28隻に上った。」
と、されている。また、この文書に記載されているグラフによると、この公船延べ28隻が領海侵入した4日間で中国漁船延べ72隻が領海に侵入している。
本年については、8月23日時点で、このように大挙して漁船が尖閣周辺に押し寄せるような兆候は見られない。17日の段階で6隻の中国漁船が尖閣諸島周辺の接続水域で操業しているのが確認されたほか、同日9時半ごろに接続水域で活動していた中国海警局の哨戒船4隻が1時間半ほど領海に侵入したのみである。
このような状況を見ても、今回は、当初懸念されていたような2016年夏のような大規模な漁船の襲来はないだろうと思われる。
中国哨戒船が領海侵入するワケ
尖閣周辺においては、現在のところ月に2回程度、中国海警局の哨戒船が領海に侵入するのが恒常化しているが、これは、接続水域における公船のプレゼンスと併せて、定期的に領海へ侵入することで、中国の実効支配をアピールするとともに、当面の間は、わが国に当該海域における共同管理を強いることを企図しているものと考えられる。
一方、このような恒常的な動きとは別に、中国漁船団が尖閣周辺で操業しているときなどに、海警局の哨戒船が4隻以上まとまって領海侵入し、長時間(1日以上)にわたって領海内に居座ることがある。これには2つの理由が考えられる。
その一つは、わが国領海内で操業する中国漁船を海上保安庁の巡視船によって拿捕されたりしないように保護するためである。
そもそも、2016年8月のように300隻もの中国漁船がこの海域までわざわざ進出して操業するのは、中国共産党指導部の意向を受けてのものであることは明らかであり、これはメディアなどによる中国漁民からのインタビューなどによっても確認されている。
このように、国策で多数の漁船に協力を求め、日本の海上保安庁巡視船が警戒している領海にまで侵入させるわけであるから、彼らを保護しないと漁民も反発して言うことを聞かなくなるのだろう。
すなわち、これは、「中国の領海で操業する自国の漁船を海警局の哨戒船が守る」という状態を作為することによって、内外に尖閣諸島が自国の領土であることをアピールしようというプロパガンダの一環なのである。
もう一つの理由は、中国の漁船に対抗して日本の漁船がこの領海内で操業することを阻止するためである。
最近では、7月に海警局の哨戒船がほぼ4日間にわたって領海内に居座り、この海域で操業していた日本の漁船を追い払おうとした事案が生起したが、これはまさにその一例である。
2016年8月のように強い政治的アピールを実行する時以外は、基本的に中国当局は自国漁船に対してこの海域への接近を禁じている。このことから、「中国がこの領海内での操業を抑制しているのだから、日本側もこの海域に漁船を入れるな」という意思を体現しているのである。
まさに、これも先に述べたような、同海域での共同管理を強いようとする動きにほかならない。
同時に、「日本の漁船が領海内で操業し、これを海上保安庁の巡視船が保護する」という形態は、2016年8月の場合とは逆に、日本側による実効支配のアピールになるという懸念を抱いているものと思われる。
尖閣諸島に漁船団は現れず…なぜ?
報道によると、今回の8月16日からの漁業解禁期間について、東シナ海沿岸の福建、浙江両省の地元当局が漁民に対し「尖閣周辺30海里(接続水域は24海里)への進入禁止」など、尖閣諸島への接近を禁じる指示を出している模様である。
中国当局がこのような指示を出すのは、わが国との「無用な摩擦を避けるため」というよりはむしろ、「この海域における日中間の駆け引きを有利にコントロールするため」というべきであろう。
すなわち、現時点において、「尖閣周辺で過激な示威行動を行うのはデメリットが大きい」と、中国共産党指導部が情勢判断しているということなのである。
では、なぜ今年になって4月14日以降、台風4号の影響で尖閣周辺から海警局の哨戒船が一時撤収するまで、接続水域において111日という連続最長日数を更新するまでに(派遣隻数を増強して)公船のプレゼンスを常態化させ、(領海内に居座って日本漁船を追い払うなど)攻勢を強めていた中国側が、ここへ来て尖閣周辺での活動を抑制する動きに転じたのであろうか。
それは、米国の(主として軍事)動向が強く影響していると考えられる。
まずこの背景として、7月23日のポンぺオ米国務長官の演説や最近の中国に対するトランプ大統領の言動などからも窺えるように、「もはや中国との軍事衝突をも躊躇しない」覚悟を決めていると受け止められる「米国の対中姿勢」がある。そして、この意志は、実際の軍事活動において顕在化している。
7月には、米海軍の2個空母打撃群による演習が、南シナ海で2回にわたり行われた。これは、中国海軍が7月1日から同海域で実施していた演習に対抗して行われたものであり、中国にとっては極めて挑発的で過激な米軍の示威行動であった。
このような米海軍の演習は、「場合によっては、偶発事案などによって実戦に突入することも想定し、これを最高指揮官(トランプ大統領)が許容」しない限り、実行には移されない類の軍事行動であると評価できる。
また、この海軍の演習に合わせるように、この期間に少なくとも2回、米空軍の(核兵器も搭載可能な)戦略爆撃機の編隊が、南シナ海周辺に飛来した。
軍事活動の舞台は東シナ海へ
そして、この南シナ海の活動が一段落した7月29日、在日米軍司令官のケビン・シュナイダー空軍中将が記者会見で、「米国は尖閣諸島の状況について、日本政府を支援するコミットメントを100%忠実に守る。1年365日、週7日、1日24時間、いかなる時もだ」と述べたのである。
これは、8月中旬からの東シナ海における漁業解禁に合わせて、「中国海警局や人民解放軍の艦船に守られた大規模な中国漁船団が尖閣諸島周辺に殺到する恐れがある」という認識の下で述べられたものであり、この言葉には「攻撃的で悪意ある行動を続けている中国に対し、日本は毅然と対応してもらいたい」という米国の思いが込められていると見なければならない。
一方、これを受けて河野防衛大臣は8月4日の記者会見で、「中国公船の活動が拡大、活発化しているのは事実だ。海上保安庁がしっかり対処してくれている」と説明した上で、「万が一、自衛隊が対応しなければならないような事態になったら、しっかり対応する」と述べた。
これら在日米軍司令官と防衛大臣の発言に応えるように、東シナ海周辺における日米共同訓練が開始された。
8月15日から17日まで、海上自衛隊の護衛艦「すずつき(DD-117)」と米海軍のミサイル駆逐艦「マスティン(DDG-89)」が東シナ海で訓練を実施したほか、ここから東方に離れた沖縄南方の海域では、同15日から18日までの間、護衛艦「いかづち(DD-107)」と米空母「ロナルド・レーガン(CVN-76)」を中心とする空母打撃群による共同演習が行われていた。
ちなみに、8月17日から31日までの間、ハワイ周辺において毎年恒例の環太平洋合同演習「RIMPAC2020」が行われている。本演習においては、通常ならば米太平洋艦隊所属の原子力空母が主力となって参加するが、今回米海軍は同艦隊所属の空母レーガンを参加させず、沖縄周辺に拘置して海上自衛隊との共同演習を優先させた。
このレーガン空母打撃群との日米共同訓練に合わせて、17日から18日にかけて、米空軍の戦略爆撃機「B-1B」とステルス戦略爆撃機「B-2A」が、米本土テキサス州ダイス空軍基地(B-1B×2機)、グアムのアンダーセン空軍基地(B-1B×2機)、インド洋のディエゴガルシア空軍基地(B-2A×2機)の各基地から東シナ海周辺へ飛来した。
このように、地域の異なる3ヵ所の空軍基地からそれぞれの戦略爆撃機が発進して同一地域に飛来するというのは極めて異例であり、今まで本邦周辺では見られなかった米空軍による示威行動であった。
また、この戦略爆撃機の飛行にあたり、米空軍のF-15(戦闘機)×10機、E-3(早期警戒機)×1機、米海軍のF/A-18(戦闘攻撃機)×2機、米海兵隊のF-35B(垂直離着陸戦闘機)×3機が、作戦支援機として本邦周辺空域で訓練を実施した。そして、航空自衛隊からは、4個航空団からF-15×16機及びF-2×4機が参加してこれら米軍機と共同訓練を実施したのである。
米空軍の戦略爆撃機が東シナ海に設定している中国の防空識別圏内を飛行していることや、常に中国軍が様々な角度から軍事情報を収集していることなどから、中国共産党指導部は、この海域で何が起こっていたかを十分に認識していたであろう。
以上が、最新の東シナ海などにおける日米軍事活動の一端である。
今こそ中国の暴挙に歯止めを
今回、中国が再び大漁船団を尖閣周辺に派遣し、多数の海警局哨戒船が尖閣諸島領海内に侵入し、2016年8月のような混乱が生じれば、「我が国は海上警備行動を発令し、自衛隊が行動する可能性がある」、ということを河野防衛大臣は示唆していた。
中国がこの「海上警備行動」をわが国による軍事行動と捉えて中国軍が動くことになれば、間違いなく米軍は即座に実戦態勢へ切り替えて軍事介入したであろう。結果的に、これは中国の望むところではなかったということだ。
8月13日の報道によれば、わが国政府は外交ルートを通じて中国側に、「中国漁船が大挙して尖閣周辺に来るようなことがあれば、日中関係は壊れる」と警告した、とされているが、前述のような日米の堅固な軍事的連携が背景にあればこそ、中国側は重くこれを受け止めたことであろう。
結局のところ、日米の軍事協力が確固としてこれに行動が伴っていれば、中国はうかつにわが国の領土などに手出しは出来ないということだ。抑止力の利いている今こそ、守りを固める好機である。
7月13日の拙稿『日本をナメすぎた習近平・・・中国の尖閣諸島侵入、むしろ好機といえるワケ』でも述べたように、尖閣諸島の実効支配を固めるため、早急に船溜まりや警備所などの施設建設に着手すべきである。
このまま何もしないで手をこまねいていると、中国側は尖閣周辺における漁船団の操業を制止したことに恩を着せて、わが国にも漁船などの操業制止を求め、再び共同管理を強いてくるであろう。長期戦は我に有利だと考えているだろうからだ。
ここでわが国の実効支配を強固にしておくことこそが、何より中国による尖閣強奪という実力行使のハードルを高めることに繋がるものと信じる。
「彼の強大に萎縮し、円滑を主として曲げて彼の意に従順する時は、軽侮を招き、好親却って破れ、終に彼の制を受くるに至らん」
西郷隆盛の金言が今再び重く光る。
鈴木 衛士(元航空自衛隊情報幹部)
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