国内でも感染が拡大している新型コロナウイルス。これほど大ニュースになると、少しの不調でも検査を受けたくなるもの。しかし、冷静さを失ってはならない。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは、安易に病院へ行くリスクを危惧する。
「少し体調が悪いくらいなら、家で安静にしていた方がいいでしょう。かぜは薬をのんでも治らないし、外出でむしろ悪化しかねません。病院でウイルスの感染を受ける恐れもある。病院に行けば安心というのは誤解です」
新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんも、「必要以上に病院や医師に頼った結果、無駄な検査や治療を受けて、健康を害してしまうケースはいくらでもある」と話す。
具体的に、無駄な医療にはどんなものがあるのだろうか。
◆胸部レントゲン検査 受けたほうが死亡率が上がる
肺がん検診の1つとして実施される胸部レントゲン検査について、岡田さんは「健康な人には不要」と話す。
「海外の研究で、胸部レントゲン検査を“1年に2回を3年間受けた群”と、“1度も受けなかった群”で比較した結果、“受けた群”の方が、死亡率が高かった。被ばくが原因だと推察できます」(岡田さん・以下同)
病気の疑いがあって医師の指示で受けるなら別だが、検診として万人が受ける必要はないと考えられる。
◆胃バリウム検査 精密に検査するほど危険増
X線を連続して照射しながら胃を撮影する「バリウム検査」について、岡田さんは「被ばく線量が多いが、効果の証明はない」と指摘する。
「特に高額な人間ドックほど精密に調べることを売りにしていますが、そのため検査に時間がかかり、被ばく線量も増えます」
一般的に、胸部レントゲン検査の数十倍の被ばく線量があるだけでなく、誤嚥して気管にバリウムが入ってしまうこともある。無理な体位で撮影することで、撮影台から転落するといった事故も起きている。室井さんも言う。
「バリウム検査が胃がんの死亡率減少につながったというデータは確かにあります。ただし、早期の段階でがんを見つけられるとは限らない。バリウム検査を受けるくらいなら、内視鏡検査を受けた方が早期発見につながります」
◆内臓脂肪CT検査 高度の被ばくリスクが
「ファットスキャン」とも呼ばれる、腹部を“輪切り”にした断面をCTで撮影して、内臓脂肪のつき具合をチェックする「内臓肥満ドック」を行う病院も増えている。CT検査にも、被ばくの危険がある。
「胸部レントゲン検査の30~100倍の被ばく線量がある。腹まわりの脂肪を測るだけなら、体重やメジャーで充分です」(岡田さん)
◆脳ドック 手術ミスによる死亡率が上昇
頭部専用のCTや、強力な磁場を発するMRIで行われる脳ドックは、脳の動脈瘤を見つけて、破裂を未然に防ぐことが目的だ。しかし、不要な手術が行われるリスクを岡田さんが指摘する。
「9mm以上の大きい動脈瘤ならば、放置するよりも手術した方が死亡率を下げられます。ところが、脳ドックでは非常に小さい動脈瘤まで見つかる。小さいものまですべて治療すると、逆に、死亡率や重篤な後遺症が残るリスクが3倍以上高くなる。これは、手術の合併症によるものです。危険な手術につながる恐れがあるので、むやみに検査すべきではありません」
※女性セブン2020年3月12日号
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