ケント氏の結論「元徴用工が賠償請求すべき相手は韓国政府」

ケント氏の結論「元徴用工が賠償請求すべき相手は韓国政府」

「徴用工像」をソウルの日本大使館に向けて動かす反日デモ参加者たち(AFP=時事)

 日韓関係が今日「最悪」とまで言われる状況になった直接的な契機は、2018年秋、いわゆる徴用工問題で韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じる判決を出したことだった。日韓関係を土台から揺るがすこの問題について、ケント・ギルバート氏が喝破する。

【写真】文政権発足直後に韓国を訪ねたケント氏

 * * *
 徴用工の問題には、私がはっきり結論をつけておきたいと思います。徴用先で起きた出来事について、かつての朝鮮人徴用工とその家族が賠償請求を行なうべき相手は、韓国政府です。

 彼らの人生に気の毒な面があったことは否定できませんが、怒りをぶつける先は、日本と国交を回復するかわり、個人が請求すべき分も一括して受け取って、それをちゃんと当事者に配分しなかった大韓民国政府そのものです。

 日本が韓国側の要望に応じて「独立祝い金」の名目で提供した合計8億ドルの資金は当時の韓国国家予算の2年分だったといいます。その資金で韓国は、ダムや高速道路、地下鉄、製鉄所、各種工場など今日の発展の礎を築き、日本からは工業化の技術やノウハウも供与されました。

 ポジティブに解釈すると、韓国人が日本から受け取るべきお金は、すべて経済の基盤整備のために使われ、韓国社会、韓国人に広く還元されました。ネガティブな想像をすれば、いくらかは権力者や財閥の懐に消えた分もあるのかもしれません。

 しかしそれはすべて、韓国側の都合です。韓国政府が自国民に対して、これまで日韓基本条約と請求権協定によって、日韓が何を合意したのかを教えてこなかったからこそ、こうした事態を招いているのです。それにもかかわらず、「個人請求権は消滅していない」などと言い出し、新たな謝罪や損害賠償を国として容認するのは、ひどい責任転嫁です。

 それでも、どうしても韓国側が日本企業に支払いを求めるのであれば、セカンドベストの方法を私が提案しましょう。請求権の放棄は、何も韓国側だけがしたのではありません。日本側が韓国国内に残してきた不動産やインフラ資産の請求権も放棄しているのです。韓国側が請求権放棄協定を無視するのなら、理論的には、あおぞら銀行(旧朝鮮銀行の日本残余資産で設立された日本不動産銀行の後身)がソウルにある韓国銀行貨幣金融博物館(旧朝鮮銀行本店)の返還を、三越伊勢丹が新世界百貨店本店本館(旧三越京城支店)の返還を要求することもできるはずです。当時朝鮮半島に土地を持っていた多くの日本人も返還を要求できます。

 こうした例はいくらでもあるわけですが、日本は決してそうしてこなかったのです。国交回復当時の日本は、朝鮮戦争後、北朝鮮に後れを取って経済的にも軍事的にも苦しい韓国に対して、かつて苦労をかけたという思いがあったからこそ、多額の援助を行なったわけです。この事実を積極的に国民に知らせなかった歴代韓国政府のおかげで、残念なことにいまも韓国人が知らない歴史になってしまっています。

 韓国政府が判決を放置し、請求権協定を骨抜きにするのならば、日本政府も当時不動産などを放棄した民間人、企業を集めて訴訟を起こすなり、あるいは元「徴用工」への賠償と同様時価評価で、あらためてこれら資産の対価を韓国側に要求するか、そのお金を韓国側で元「徴用工」への支払いに充当すればいいでしょう。これならば、現状よりはいくらかフェアです。もっとも、まさかできるとは思いませんが。

 私は2008年、リーマンショック後の金融危機において、韓国の企画財務部長官が日本の新聞に対し、「日本は支援を出し惜しみしている」とか、「アジア諸国が日本にふがいなさを感じる」などと述べたのを見て、韓国に対する日本の長年の支援は、ついに政府レベルでも忘れられたと確信しました。

 自分たちの政府は、日本からすでに充分すぎるお金を受け取っているのです。日本は、徴用工問題に関しては引き続き断固たる態度で臨むべきです。日本企業に実害が出た場合は、敢然と対抗措置を取るべきです。決していままでのような「謝罪病」をぶり返して国益を失ってはいけません。自分が悪くないのにとりあえず謝るというのは、日本人の習慣であり美徳かもしれませんが、日本以外の国では絶対にやってはいけません。そもそも徴用工問題で日本が妥協すべき点は皆無なのです。

◆ケント・ギルバート著『中韓が繰り返す「反日」歴史戦を暴く』(祥伝社新書)を一部抜粋のうえ再構成

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