元朝日新聞記者の植村隆氏(61)が、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らに対して名誉毀損(きそん)を理由に損害賠償を請求した訴訟。今月6日には札幌高裁で控訴棄却判決が言い渡され、二審でも植村氏の敗訴となった。
まずは訴訟についてだが、
「植村氏は、慰安婦を支援する団体から元慰安婦・金学順さんの証言テープを入手。1991年、朝日新聞に、彼女が〈『女子挺身隊』の名で戦場に連行された〉と書いた。これについて櫻井さんが“捏造”などと論評したことに対し、名誉毀損だと裁判を起こしたのです」(全国紙記者)
札幌高裁は一審同様、櫻井氏の記事が“論評”の範囲内であり、名誉毀損による損害賠償も認められないと判示。それどころか、
「植村氏が“金さんが日本軍人により強制的に慰安婦にされたと読み取るのが自然”と主張した資料について、その解釈もバッサリ否定。金さんは、日本軍人から金銭を得ようとした継父に騙されて慰安婦になったと読み取れる、との真っ当な判断を示しました」(同)
実際、判決文には〈各資料からは(中略)日本軍の関与に関わる消極的事実を読み取ることが可能〉とあり、植村氏の“恣意的”な資料の読み方が白日の下に晒されたのである。
だが、恣意的なのは植村氏ばかりではなかった。
目標額は2千万ウォン
6日の高裁判決直後、北海道新聞が配信したインターネット記事のタイトルは、
〈慰安婦記事、元記者の控訴棄却 桜井氏の名誉棄損は認定〉
もはや恣意を通り越した歪曲ともいうべきで、フラクタル法律事務所の田村勇人弁護士も、
「“捏造”という記述は社会的評価を下げる論評ですから、確かに形式的には“名誉毀損行為”は存在します。ただ、内容が真実であるか、真実だと考えたことについて相当の理由があり、公共性、公益性が認められれば、名誉毀損は成立しない。まさに今回そうなったわけで、北海道新聞は、不正確な報道と言われても仕方がないでしょう」
さすがにやりすぎたと思ったか、道新は直後にタイトルを訂正。しかし、依然、記事の中には〈(高裁が)名誉棄損の成立は認めた〉とあり、明らかな“意図”が見えるのだ。
日本の一部新聞ですらこのあり様なのだから、お隣の国は推して知るべしで、在韓ジャーナリストによれば、
「韓国では、日本のNHKにあたるKBSテレビが夜9時のメインニュースで裁判の結果を扱うなど、注目度は高かった」
その内容はといえば、
「“日本の恥を詳(つまび)らかにした対価は残酷だった”とか、“非常識の国、日本と戦う常識の日本人”とか、植村氏に寄り添うものばかり」
当方の“常識”が彼の国で“非常識”となることには今さら驚かないが、
「近頃は、植村さんを援護しようと、ネット上で募金活動まで行われている」
と聞けば、その怨念の強さには背筋に寒気すら感じてしまう。
「主催しているのは大韓民国臨時政府記念事業会という団体です。“平和統一および正しい国家観の確立”を掲げる政府系の団体で、理事には与党の議員やマスコミ幹部など有力者がぞろぞろ。この団体が昨年9月に“植村隆を考える会”を発足させ、SNS上のクラウドファンディングなどを利用して金策に奔走しているのです」
集まった募金は上告予定の植村氏の裁判費用などに充てられる見込みだという。
「目標額の2千万ウォン(約185万円)に対して、すでに1700万ウォン以上の金が寄せられているそう」
なにしろ“反日”という現政権のアイデンティティの根幹を揺るがしかねない植村氏の敗訴である。200万円足らずの募金なら、お安い御用か。
「週刊新潮」2020年2月20日号 掲載
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