「夢の若返り薬」最新情報 今井教授が語る「こうして長生きする!」
NHKのスペシャル番組でも取り上げた”長寿の源”
いま、世界中の研究者が注目している抗老化、健康長寿の源と言われる“物質”がある。NMNという“物質“で、すでにカプセルで市販もされている。NHKのスペシャル番組『ネクストワールド』でも取り上げられて話題を呼んだ。開発者は、ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)の今井眞一郎教授(55)である(「NMN」に関しては後述する)。
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長年にわたってNMNの開発を続けてきた今井教授は、2019年、血液を巡っているeNAMPTという酵素が抗老化・健康長寿に顕著な効果があると発表した。朝日新聞の一面でも取り上げられた。
アメリカから帰国した今井教授に、最新の「夢の若返り薬」情報について聞いた。
2019年6月、米国の学術誌『セル・メタボリズム』(電子版)に載った一本の論文が、世界の研究者たちを驚かせた。抗老化に関する有効な作用が、マウスの実験で証明されたというのだ。論文を発表したのが、今井教授の研究グループ(国立長寿医療センターとの共同研究)だった。
人体にはエネルギー代謝に必要な「NAD」(ニコチンアミド・アデニン•ジヌクレオチド)という物質が存在する。NADは年齢を重ねていくうちに色々な臓器で減っていくのだが、eNAMPTという酵素はそのNADを合成するのに重要な働きをしている。体内のeNAMPTの量が多いほど、老化が遅れて寿命が延びることを、マウスの実験で証明したのだ。
今井教授は2016年にも、NADのもとになる「NMN」(ニコチンアミド・モノヌクレチオド)に、顕著な抗老化作用があることを報告している。
今回の成果は、さらにそれを上回る画期的なものだった。
今井教授が説明する。
「私はNADをエネルギーの通貨と呼んでいます。NADはすべての生物の体内にあり、生命活動のためのエネルギー代謝にとって必要不可欠の物質です。NADの合成は、NAMPTと呼ばれる酵素が合成中間体(ある化合物の合成過程において、途中で現れる化合物のこと)であるNMNを作り出し、NMNがさらに別の酵素によりNADに変換されることで行われています。
NAD合成を促進することで、サーチュインと呼ばれる老化•寿命の制御因子を活性化させる。ここが重要です。NADは、全身の様々な臓器・組織において加齢とともに低下していくことが明らかになっています。NADが低下すると臓器や組織の機能が低下し老化関連疾患の病気を引き起こすことも分かってきました。NMNはこのNADの生産に関わる重要な役目をしているのです」(NAMPTには、細胞内で働くiNAMPTと、細胞外で働くeNAMPTがある)
実験では、生後6カ月と18カ月のマウスを用意。血液中のeNAMPTの量を比較すると、18カ月のマウスはオスで74%、メスで33%も量が減っていた。また、その量が多いほど、マウスの余命が長かったのだという。そして、eNAMPTの量を増やすことで“若返り”のような効果もあった。
これが「抗老化」を実証する写真だ!
さらには、若いマウスから採取したeNAMPTを26カ月のマウスに3カ月間、1週間に1回投与し続け、マウスにどのような変化が起こるかを調べる実験で、驚くべき結果が出たのだ。
「26カ月齢というと、人で言えば80歳くらいの老化したマウスです。3カ月間eNAMPTを与えると、通常の29カ月齢マウスは毛並みはバサバサなのに対しツヤツヤで、滑車もカラカラ回すほど運動量も上がり、最大寿命は16%も延びました。前回のNMNの実験、今回のeNAMPTの実験から、NMNもeNAMPTも非常に強力な抗老化作用があることが分かりました。両方とも人にもマウスにも同じようにあるので、働きも同じだろうと考えられます」
2匹の老齢マウスの実験映像がある。1匹にはeNAMPTの量を増やしており、もう1匹には与えていない。2匹の動きは明らかに違う。量が多いマウスはかごの中を活発に動き回るが、もう一方はモゾモゾとしているだけで活力がないように見える。
「動き回るマウスは80代の人が50~60代の活動能力を保っている状態です。すでに述べましたが、NMNを作る酵素のeNAMPTは老化と共に血中を循環する量が減少します。eNAMPTを増やしたことで、NMNが作られ、NADが合成されて増えたことで、体内の様々な臓器の機能が改善されたのです」
具体的な効果も、判明している。
「例えば、睡眠の質が高く保たれ、記憶能力が高まり認知機能も改善することが確認されています。眼の機能も調べました。マウスは歳を取ると網膜の機能が下がるのですが、eNAMPTの投与で眼の網膜機能も向上します。インスリンの分泌も良くなることが分かっています。見た目も健康そうな状態が保たれます」
同時に行った人間への調査でも、同様の現象が確認されたという。
「30代から80代の男性における調査でも、eNAMPT量が減少していました」
老化による臓器の機能の低下を抑制するだけではなく、様々な抗老化作用が実験で分かってきた。eNAMPTは、NMNと並んで、人類にとって、「夢の若返り」を実現に導く物質になる可能性を秘めている。
eNAMPTは、すでに開発されているNMNと同じく、まさに夢の“長寿薬候補”なのである。但し、その今井教授は、NMNについては、「クスリ」ではなく、「ニュートリシューディカル(栄養として認識されるような生体物質)」と呼ぶ。
NMNの人間への効果に期待
人間への実用化は、今後どう進んでいくのだろうか。
いまの段階では、eNAMPTを「商品化」するにはまだ時間がかかると語る。しかし、前述したようにeNAMPTが作り出すNMNについては、すでに開発発売されている。
「げっ歯類とヒトの両方で安全性が確認され、しかも高純度で高安定性のNMNは、現時点では世界に2つしかなく、既に製品として販売されています。いずれも日本国内の会社です。すでに大量生産に成功し、もちろんヒトでの臨床試験でも使われています。ただ、現時点でNMNの欠点は価格が非常に高いということです」
編集部の調べでは、そのうちの1社の新興和製薬が開発・販売している製品はすでに人気で、中国でも販売している。同社は、今井教授の所属するワシントン大学で行われる予定のNMNの第2次臨床治験に、NMN150mg入りのカプセルを提供することになっている、という。
ちなみにその価格は、市販の場合、NMNの含有量によって違うものの、60カプセルで11万8800円(NMNピュア3000)、34万5600円(NMNピュアVIP9000)と高額である(10万円を切る廉価な商品もある)。
現行の価格では、購入する人は一部の限られた人たちにならざるを得ないだろう。 しかし、今井教授が今後の見通しをこう語る。
「NMNはオーバーザカウンター(店頭)で購入でき、毎日自分で安全に飲める製品です。抗老化物質となるトップの候補ですから需要は確実に伸びる。そして大量生産の技術革新が進めば、今後確実に価格は下がると思います」
今井教授は、2020年中にはNMNのヒトにおける臨床研究の結果を発表予定である。さらに規模を広げた臨床研究も準備段階にあり、大きな反響を呼ぶことは、間違いない。
副作用について、質問してみた。
「eNAMPTについてはまだ未知数ですが、NMNに関して、副作用と呼べるべき現象は認められていせん。最初はガンを心配していたんですよ。ところが、1年間もマウスに投与しましたけど、ガン化の率はまったく変わりません。現時点では副作用らしい副作用っていうのは、ほとんど認められません」
今井教授はNMNを「クスリ」にはしたくない意向だ。「クスリ」になれば、病気に罹患してから医師の処方箋によってしか入手できなくなるからだ。
長寿のための食生活、日常生活。危険なダイエット
今井教授が今後の展開をこう予測したうえで、手が届く価格になるのが待ち遠しいが、今井教授は、通常の食品の中にNMNが含まれていることも教えてくれた。
「例えば枝豆、アボガド、ブロッコリー、トマトなど、野菜フルーツ系に入っています。肉や海産物にはあまり含まれてはいません」
上記の食品なら、手軽に日常的に取ることができるだろう。
そして、抗老化を妨げとなるのが、無理なダイエットや偏った食習慣だという。若い人たちが痩せるために安易に無糖食や炭水化物ダイエットを行うのは危険だと指摘する。
「BMI(体重と身長の関係から肥満度の標準は22とされる)が20を切る若い女性が増えていますが、女性で20を切る方は60代以降になると神経系の疾患や心臓、血管系の疾患、感染症で死亡する率が飛躍的に増大します。若いうちはNADが十分にあるのであまり気にしなくていいですが、お歳を召されてきたら、ちょっと小太りの方がNADを維持するにはいいんです。脂肪は、重要な老化のコントロールセンターになっている視床下部のNADを支えるための必須の働きをしています。そのため脂肪があまりないと、高齢になってからNAD合成が機能しなくなり、あらゆる病気に罹りやすくなって早死にするリスクが高まってくるのでは、と私は予想しています」
食習慣の指摘は、働き盛りのサラリーマンには、特に耳が痛い。
「日本人の現代生活は夜遅く帰り、炭水化物やラーメンなど高カロリーのものを食べる。これは老化と寿命の制御の観点からは完全にアウトです。日本人が欧米人より太っていないのに糖尿病患者が多いのは、こうした不適切な生活スタイルが大きく関わっていると思います」
NADの機能を高めるために重要なのは、体のリズムだという。
「NAMPTを増やしてNMNの産生を高めるのは運動です。すでにヒトやマウスで運動によって骨格筋のNAMPTの量が増えることは証明されています。体が本来持っているリズムを正確に整えることが大事です」
そして、やはり夜型より朝型の生活習慣がいいのだ。
「NAMPTもNADの産生にも周期があります。マウスは夜高いのですが、ヒトは昼間高く夜低くなります。要するに活動期に高くなる特徴を持っています。毎日のNADのリズムを乱さずに効果を高めるためには、NMNを少なくとも午前中に高めるのが重要です。活動期の最初に最も高いカロリーを取ること。つまり朝食に最も栄養価の高い食事をとり、運動と睡眠のコントロールセンターである視床下部のリズムがきちんと保たれる生活をすることが大切なのです」
自身の食生活でも、実践していることだという。
「朝から、ステーキも食べますし、でかい魚も食べます。2014年以来、私と家内は普通の方が夜に食べるようなものを、朝に食べています。昼は普通に食べて、夜はほんのちょっと食べるだけなのです」
世界で共通する「長寿の戒め」
今井教授に、中国とドイツの知人が、自分の国ではこういう古い言い伝えがあると教えてくれたという。
「英語にするとまったくおなじで。それがこれです」
Eat breakfast like an emperor,
lunch like a king,
and dinner like a beggar.
「これが長寿の秘訣で言い伝えられているそうです。ドイツと中国で言葉は違うんですけど、英語に翻訳すると両方とも同じ内容です。
イギリスのバージョンは、Eat breakfast like a queen, lunch like a princess, and dinner like a maid.と言うんだそうです。だから私の一般向けの講演の終わりは、最先端の老化の科学を語った後で、『みなさんに知ってほしいのは、古い知恵に学んでください、ということです。おばあちゃんが教えていたことは本当です』と語りかけます。だから、朝食をしっかり食べないとだめなんです」
今井教授は現在55歳だが、若々しく見える。
日常生活のリズム、食べ物、運動が抗老化に効果があるのは、今井教授自身が証明してくれているのかもしれない。
第2回目は、今井教授の研究の詳細と経緯について触れる。
今井教授の研究を正しく理解するためには、第2回目記事を是非読んでください。=> https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70394
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