もう一度言おう、中国がアメリカに「絶対に勝てない」その理由

6/12(金) 6:31配信

もう一度言おう、中国がアメリカに「絶対に勝てない」その理由

 先週は香港問題に焦点を当てて、中国は米国に「絶対に勝てない」理由を書いた。一言で言えば、米国が香港ドルと米ドルとの交換を停止すれば、香港経済は一発で崩壊してしまうからだ。今週は中国にも目を配って、その続きを書こう。

【写真】まるで巨大な赤ん坊…中国人が北欧で起こした「外交問題級わがまま」

 読者の中には「香港には多くの米国企業が進出しているから『米ドルへの交換停止』のような荒業を断行したら、米国も返り血を浴びる。だから実行できないだろう」と考える向きもあったかもしれない。

 だが、この話は「私が頭で考えて、導いた論理的帰結」というだけではない。現地では、多くの人々が抱く心配となって現実化している。

 たとえば、6月8日付のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)はアナリストの話として「香港への国家安全法導入に対して『中国と香港を制裁する』というドナルド・トランプ米大統領の最近の脅しは、米ドルへのアクセスを遮断するプロセスの始まりになるかもしれない」と報じた(https://www.scmp.com/economy/china-economy/article/3087996/could-us-sanctions-over-hong-kong-national-security-law)。

 これは、まさに私が先週、6月5日公開コラムで指摘した話とまったく同じだ(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73081)。物事の本質を論理的に突き詰めれば、東京で考えても香港でも、同じ結論になるという実例である。

制裁がなかったとしても…
Photo by gettyimages

 SCMPの記事は交換停止の可能性を認めつつも「多くのアナリストは、トランプ政権は極端な制裁をしない、とみている」と書いている。中国と1月にまとめた貿易交渉の「第1段階の合意」を維持するためにも、米国は全面的な金融制裁を避けるだろう、というのだ。

 貿易交渉の合意は、もはや「風前の灯火」と私は思う。だが、当事者とすれば「なんとか、米ドル交換停止だけは避けてもらいたい」と期待するのは理解できる。ちなみに、SCMPのオーナーは中国有数の大企業であるアリババ・グループ(ジャック・マー会長)である。

 それでも、問題は残る。

 米国が交換停止をしなくても、香港と中国が保有する米ドルを枯渇させてしまったら、7.8香港ドル=1米ドルのドルペッグ制を維持できなくなる。将来を不安視した多くの企業と市民が先を争って米ドルを買い求めている中、当局が米ドル売り介入で香港ドルを支えられなくなったら、たちまち香港ドルは暴落し、経済は立ち往生するだろう。

 したがって、トランプ政権の制裁をひとまず棚上げしたとしても、さしあたって香港と中国にとって重要なのは、貿易で米ドルを稼げるかどうか、という問題になる。そこで中国の経常収支を見ると、2019年末の405億ドルの黒字から、2020年第1四半期は297億ドルの赤字に転落した(https://jp.reuters.com/article/china-economy-forex-idJPKBN22K177)。

 これは「それだけ米ドルが海外に流出してしまった」という話にほかならない。なぜ、そうなったかと言えば「新型コロナウイルスの影響で輸出や観光、さらに海外からの投資が減ったからだ」とSCMPは書いている。

 中国の5月の貿易収支は629億ドルの黒字だった。だが、これは内需が弱くて、輸入が減ったのが主な理由である。本来の稼ぎ手である輸出は、相手の米国や欧州が新型コロナで大打撃を被ったために、回復しそうにない。つまり、介入原資にする米ドルの入手難はこの先も続く。

 そんな状態だから、トランプ政権は本当に米ドルの交換を停止する必要もないかもしれない。チラッと制限するような素振りだけで、香港企業と市民は焦って米ドル買いに走るだろう。それがまた、不安に火を付ける。そして本当の危機に近づいていくのだ。

コロナ前から苦境だった中国
 実は新型コロナの発生前から、中国経済は暗礁に乗り上げていた。

 5月26日付の米誌フォーブス電子版が、そんな中国の窮状を手際よくまとめている(https://www.forbes.com/sites/wadeshepard/2020/03/26/covid-19-undermines-chinas-run-as-the-worlds-factory-but-beijing-has-a-plan/#3ca0faf5459a)。それによれば、中国はこれまで「世界の工場」として外国資本を引き寄せてきた魅力をいま、ことごとく失いつつある。

 まず、労働賃金が上昇し「安い単純労働」が手に入りにくくなった。「1人っ子政策」のおかげで、労働人口自体も急速に減りつつある。環境基準が緩いのを理由に、企業は汚染物質を垂れ流し放題だったが、基準が厳しくなって、多額の設備投資を迫られるようになった。

 加えて、経済成長したおかげで、米国と利害が衝突し、米中新冷戦になった。中国で作った製品を米国に輸出しようにも、高い制裁関税を強いられ、外資にとっては旨味が減ってしまった。そこに襲いかかったのが、新型コロナだった。

 新型コロナの感染拡大で、中国に進出した外国企業は、どこも「一極集中」の怖さを味わった。原材料の調達や組み立て拠点を中国だけに依存していると、中国がコケれば、たちまち全世界の生産がストップしてしまう。

「脱中国」は「汚い言葉」ではない
写真:現代ビジネス

 というわけで、いまや外資企業にとって最大の課題は「いかに早く中国を脱出するか」になった。サプライチェーンの多様化が不可欠になったのだ。注目されているのは、日本だ。4月10日付のフォーブス電子版は、ラリー・クドロー米国家経済会議(NEC)委員長がFOXビジネスニュースの番組で語った発言を紹介している(https://www.forbes.com/sites/kenrapoza/2020/04/10/kudlow-pay-the-moving-costs-of-american-companies-leaving-china/#66b380e613c6)。

 日本の安倍晋三政権は新型コロナに関わる第1次補正予算で、中国から生産拠点を移す企業への支援策として、2486億円の補助金制度を新設した。クドロー氏は、これに刺激されたのか「工場から設備投資、知的財産、技術開発などあらゆる分野にわたって、我々は中国から出たいと思っている米国企業の移転費用に100%、カネを出すつもりだ」と語った。

 いまや「脱中国」「デカップリング(切り離し)」は、米中対立の負の側面を示す「ダーティ・ワード(汚い言葉)」でもなければ、政策担当者の頭の中だけにあるシナリオでもない。日本でも米国でも、実際の政策になっている。

 中国共産党の習近平国家主席はもちろん、これに気付いている。だからこそ、外資企業が中国を出ていかないように、あの手この手で必死の食い止め工作を展開中だ。日本企業が「生産再開に〇〇が必要だ」と言うと、たちどころに「〇〇〇〇がそろう」という話もある。

 中国の成長を支えてきたのは、外資企業だった。だが、その外資が逃げ出し始めた。国内企業だけで成長できるかといえば、たとえば、ご自慢の華為技術(ファーウェイ)を見ても、トランプ政権の制裁によって立ち往生している。第5世代移動通信システム(5G)の展開に不可欠な半導体を自前で作れないのだ(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-08/QBKUMADWRGG301)。

 もう1度、繰り返そう。中国はどうがんばっても、米国に勝てない。

長谷川 幸洋(ジャーナリスト)

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