香港問題の真の意味…世界が直面しているのは「反民主主義」の脅威だ
6/23(火) 7:01配信
現代ビジネス
「香港の壁崩壊」を恐れている共産主義中国
写真:現代ビジネス
香港における民主主義の危機については6月9日の記事「香港『国家安全法』で、民主主義vs反民主主義の戦争がいよいよ始まる」などで繰り返し述べてきた。
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東西冷戦時代、自由主義・民主主義陣営から「赤い海(共産主義諸国)に浮かぶ自由の島」と呼ばれていた西ベルリンは、壁(1961年建設)によって周囲から分断され、まさに冷戦の象徴であった。
なお、西ベルリンは第2次世界大戦終戦後1949年から1990年まで、アメリカ・イギリス・フランスが占領したベルリン西部の地域だが、西ドイツの公式な領土ではなかった。
香港に物理的に強固な壁が建設されているわけではないが、1997年の再譲渡・返還の際に定められた「1国2制度」がまさに「見えないベルリンの壁」の役割を果たしてきた。
つまり、東側に囲まれたベルリンの中に飛び地として存在していた西ベルリンのように、香港も反民主主義(共産主義)国家の中に、民主主義(自由主義)の飛び地として存在していたと言える。
東西両陣営が「ベルリンの壁」を挟んでにらみ合っていたのが冷戦だが、東側で高まった民主化のうねりを背景に、偶然も重なって一気に壁が崩壊し、最終的には民主主義国家である西ドイツ主導で、「反民主主義国家」東ドイツを(実質的に吸収する形で)再統一した。
これですべてのドイツが民主化されると誰もが思ったが、そうではなかったことは、この後述べる。
香港では、中国共産党が1国2制度という「見えないベルリンの壁」を破壊しようとしている。しかしこれは、逆から考えると、香港という民主主義・自由主義の砦が、中国大陸の反民主主義国家を侵食することに対して、中国共産党が耐えられなくなっているということを意味する。
トロイの木馬が仕込まれている
毛沢東による大躍進・文化大革命と呼ばれる「大破壊」の後、共産主義では決して豊かな社会を築けないと悟ったトウ小平が始めた改革開放で、中国大陸の経済に「自由の風」が吹き込まれた。
しかし、経済的自由を謳歌して豊かになり教養も身につけた人々に、「政治的独裁」を押し付けることは困難だ。共産党の真の目的は、「自らの利権の確保・維持であり、人民の幸福ではない」から、共産党の利権が脅かされるのであれば「自由」など簡単に切り捨てる。
その時、目の上のたん瘤となるのが、共産主義中国の中に飛び地として存在している、自由主義・民主主義の砦である香港だ。
「1国2制度」は、西ベルリンのように、反民主主義中国の中に民主主義の飛び地をトロイの木馬のように仕込む目的があったと思われる。そして、その英国を始めとする民主主義陣営の作戦が成功したからこそ、中国共産党が香港弾圧に死に物狂いになっていると言える。
しかし、注意しなければならないのは、反民主主義陣営からの「トロイの木馬」も民主主義国家に多数潜伏しているということである。しかも、それは香港のようなまとまった形ではなく、ウイルスや細菌のように微小な単位であらゆるところに侵入している。しかも、潜伏期間には何事もないが、発症すると宿主を死に至らしめることもあるという恐ろしい病だ。
メルケルは反民主主義を目指しているのか
ベルリン問題の当事者であるドイツの現在の首相については、5月25日の記事「人類の敵・中国を大躍進させたメルケル首相『16年間の独裁』」で述べたように、彼女自身の親共産主義、媚中的行動が、人類の敵を大躍進させる原動力の1つであったことは間違いがない。
2018年の10月に、選挙での惨敗の責任をとる形で、「12月のCDU(キリスト教民主同盟)の党首選には立候補せず、2021年で首相の任期が切れたらもう首相候補としては立たない。また、すべての政治活動から身を引く」と宣言した。
したがってメルケル首相の「独裁」は来年終わるはずなのが、そこにやってきたのが中共(武漢)肺炎ショックである。
そもそも、2018年の宣言自体が極めて不自然なものだ。責任をとって即時に辞任するのではなく、2021年に首相を引退すると宣言したのは、今後3年間は絶対に首相をやめないという「居座り宣言」をしたのも同然である。
来年での引退を表明していたが、そこにやってきたのが中共(武漢)肺炎パンデミックである。危機を演出して、権力を掌握するのはアドルフ・ヒットラー、毛沢東、ヨシフ・スターリンなど世界の独裁者の常套手段だが、天から「危機」が転がり込んできたのだから、メルケル氏は内心ほくそ笑んでいるかもしれない。
悪夢が再びやってくるか?
日本のオールドメディアはメルケル氏のパンデミック対策をほめるが、来年の「首相退任撤回」に向けて「国民の人気とり」をしているだけのように思える。そもそも、オールドメディアが称賛する人物にろくな人間はいない。
私が安倍首相を高く評価するのも、5月22日の記事「安倍首相を叩く『アベノセイダーズ』が、民主主義を捨て全体主義に走る理由」で述べたように、オールドメディアが決して安倍首相を称賛しないからだ。
もし、来年以降メルケル氏が首相続投となれば、ドイツはナチス・ドイツの悲劇を繰り返すかもしれない……アドルフ・ヒットラーが最初に政権を掌握したのは暴力によってではないことを思い起こしてほしい。
1933年3月5日に行われたドイツの国会選挙でナチ党とドイツ国家人民党(DNVP)で過半数を獲得し、召集された国会で全権委任法を可決させて独裁権力を固めたのだ。
(ファシズムと同様に反民主主義・全体主義である)共産主義的傾向が著しいメルケル氏の独裁が続くことは、日本を含む他の国々にとっても恐怖だ。彼女は民主主義の仮面をかぶった全体(独裁)主義者に思える。
反トランプ勢力=反民主主義勢力?
トランプ大統領およびそのルーツについては、1月16日の記事「勝つためには手段を選ばない男・トランプとは何者か…ルーツを探る」で詳しく述べた。世間のイメージ通りの、「剛腕な経営者」タイプであるのは事実である。
しかし大統領になったのは「大統領になって金儲けをするため」ではない。世界中の国々で中共(武漢)肺炎によって多くの人々が苦しんでいる中、議員の給与が大きな問題になっている。安倍首相は2012年から東日本大震災の復興を目的に(2014年からは行政改革を目的に)30%の給与の自主返納を続けているが、トランプ大統領はもっとすごい。本来の給与は40万ドルだが、受け取っているのは1ドルだけである。
もちろん、大富豪だからはした金を受け取る必要がないとも言えるが、少なくとも「自分が金儲けをするために政治を行っているのではない」ことは明らかである。むしろ、自分の財産を費やして政治改革を行おうとしているといえるであろう。
それに対して民主党では、「金の亡者」と評されるクリントン夫妻をはじめ、オバマ前大統領や大統領有力候補のバイデン氏(およびその息子)まで、金銭がらみの疑惑が絶えない。
ビル・クリントン元大統領に至っては、現在世間を騒がしているアンジャッシュの渡部建氏の「多目的トイレ不倫」よりもさらに恥ずかしい、「大統領官邸不倫」におよんだ「モニカ・ルインスキー事件」を起こして、弾劾されそうになった。
そのような、金銭疑惑などが絶えない民主党の資金源に「反民主主義国家」や「反民主主義勢力」が含まれていると考えても不思議ではない。
実際、6月20日公開の「米国デモ・暴動が結局『トランプ再選』をサポートするという現実」で述べたように、極左集団が先導していると思われる、シアトルにおけるISのイスラム国のような「自治区」を認めているのは、民主党の市長と民主党の知事である。
民主党という名前に惑わされがちだが、それは中国人民を虐待する共産党の事実上の私兵を「人民解放軍」と呼ぶのと同じたぐいのプロパガンダである。現状を見る限り、米国民主党が目指しているのは「反民主主義」的政治だと言わざるを得ない。
香港に象徴される「現代のベルリンの壁」は目に見える存在ではないから、反民主主義国家に民主主義が浸透しやすいのと同様に、民主主義国家も「反民主主義ウイルス」の大きなリスクにさらされる。
この「反民主主義ウイルス」は目に見えないから、症状が現れたときには重体で手の施しようがないということも十分考えられる。
我々は、この目に見えないリスクと真剣に対峙しなければならないのだ。
大原 浩(国際投資アナリスト)
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