7/12(日) 7:05配信
健康へ害をもたらす超加工食品 認知症やうつのリスクも
いまだ外出しづらい日々が続く。「気晴らしに夫婦で外食でも」とはいかず、食事の支度ができない日は、冷凍食品やインスタント食品、レトルト食品、菓子パンなどに頼ることもあるはずだ。
こうした加工食品は、「安く」手に入り、忙しいときでも、子供でも「簡単」に用意できて、しかも「おいしい」。しかし、いいことばかりではない。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行さんが言う。
「こうした食品は『超加工食品』と呼び、食品添加物がたっぷり入っていたり、脂質や塩分量が多かったりする。それぞれの添加物などは食べてすぐに体に異常をきたすものではありません。ただし、長期的に摂取すると、糖尿病やがんなどになりやすくなるリスクが指摘されています」
欧米では「超加工食品に課税して消費量を減らすべき」という議論が出てきている。特にフランスでは、政府がいまの消費量の20%以上減らすよう呼びかけているのだ。
◆危険なのにやめられなくなる
具体的にどんな食べ物が「超加工食品」に該当するのだろうか。米国ボストン在住の内科医、大西睦子さんが説明する。
「2009年にブラジルのサンパウロ大学の研究チームが提唱した『NOVA分類』では、すべての飲食物を加工の性質や目的、程度に応じて4段階に分類しています。この中で最も加工度が高いものが『超加工食品』です」
NOVA分類では、最も加工度が低い「生鮮食品・ほぼ無加工の食品」には野菜や果物、豆類、肉、魚、牛乳など。
続いて、料理塩や砂糖、植物油、バター、酢などの「加工食品の材料」がある。
次に、パンやチーズ、薫製肉など、家庭でも使う材料を使って加工した「加工食品」。
そして加工度“最上級”の「超加工食品」は、「大量生産された菓子パン、インスタント食品、保存料を使用した肉加工品など、家庭で調理する際には使わない添加物や油脂などを過剰に加えた食品」となる。
「炭酸飲料を含む清涼飲料水、スナック菓子、チョコレート、菓子パン、ケーキ、ビスケット、アイスクリーム、ハンバーガー、ホットドッグ、チキンナゲットなどが『超加工食品』にあたります」(大西さん・以下同)
まさに“早い、安い、うまい”ものばかり。当然ながら、冷凍食品やインスタントラーメン、コンビニの弁当や総菜なども該当する。これらのほとんどが、食べ続けると体に害を及ぼすのだ。
世界各地から報告されている超加工食品の健康被害は、ショッキングなものが多い。
「2019年2月、アメリカの医師会誌に“45才以上のフランス成人4万4551人を対象に長期の追跡調査を行った結果、超加工食品を消費する割合が10%アップすると、死亡リスクが14%上がる”という報告がされました。
また、2018年の英国の医師会誌の報告では、発がんリスクの上昇が示唆されています。今年のブラジルの研究チームのレポートでは、超加工食品の消費量が10%上昇すると肥満になる確率が18%上昇することがわかりました」
2015年、豪州のディーキン大学のチームは、さらに衝撃的な研究結果を報告した。
焼き肉やソーセージ、ハンバーグ、ステーキ、ポテトチップス、清涼飲料水を摂取している人たちは、脳の左側の「海馬」が萎縮しやすいということがわかったのだ。
「詳しくは解明されていませんが、アルツハイマー病や軽度認知機能障害の患者は、左の海馬が小さくなる傾向があります。海馬は学習や記憶のほか、抑うつなど気分の調節にも関与している器官。また、左脳は右脳に比べてアルツハイマー病になったときに影響を受けやすいといわれます」
つまり、超加工食品を食べ続けると、認知症やうつのリスクも上がるのだ。これほどの危険性がありながら、超加工食品を食べ続けてしまうのは、単に「便利だから」というだけではない。これらは往々にして塩分や糖分、脂肪分が多く、1食でかなりの量を摂ることになる。それが“超加工食品依存症”につながるというのだ。
「米国のイェール大学の研究によると、超加工食品を食べると、脳内の快楽を司る『報酬系』の神経回路が活性化する。つまり、一度食べるとますます食べたくなり、“依存症”のようになるのです」(小倉さん)
◆お腹の中で有害物質に変化
消費者問題研究所代表で食品表示アドバイザーの垣田達哉さんが話す。
「超加工食品は、塩分、糖分、脂肪分が非常に多い。塩分の摂りすぎは高血圧、心臓病や循環器疾患につながります。『アスパルテーム』や『スクラロース』などの人工甘味料も、砂糖と同様に“肥満ホルモン”といわれるインスリンに作用し、摂りすぎは肥満や糖尿病を招きます」
インスタントラーメンはよく塩分と脂肪分の多さが健康に悪いと指摘されるが、それだけではない。食品ジャーナリストの郡司和夫さんが言う。
「麺を揚げるとき、多くがヤシの実からとれる安価なパーム油が使われていますが、これは心疾患(心臓病)や糖尿病のリスクが上がるといわれる飽和脂肪酸を多く含みます。輸送時にパーム油が酸化するのを防ぐために使われる『BHA(ブチルヒドロキシアニソール)』という食品添加物は1998年、動物実験で発がん性が確認されています」
高温の油で揚げたファストフードやスナック菓子などは、トランス脂肪酸による被害が心配だ。
「米ハーバード大学の研究によれば、摂取するトランス脂肪酸のわずか2%を不飽和脂肪酸に置き換えただけで、心疾患リスクが53%も減ったという結果が出ています」(大西さん)
また、ハムやベーコンなど加工肉の色合いをよくする『亜硝酸ナトリウム』は、それ自体に害はないが、体内に取り込むことで危険な物質に変わる。
「ヒトの胃の中にもある『アミン類』と混ざると強力な発がん性を持つ『ニトロソ化合物』が生成されます。加工肉によく使われる保存料の『ソルビン酸カリウム』も、体内で生成される亜硝酸ナトリウムと合わさると発がん性物質ができる。さらに、動物実験で、肝臓肥大や成長抑制、染色体異常などが起こることも確認されています」(郡司さん)
WHO(世界保健機関)も「加工肉を50g摂るごとに大腸がんになる可能性が18%アップする」と警告。選ぶなら発色剤を使わない「無塩せき」と表示してある商品がいいだろう。
これ以外にも、化学調味料の『たんぱく加水分解物』や、天然のでんぷんに化学薬品を加えて作る『加工でんぷん』、菓子やレトルトカレーの着色料として使われる『カラメルIII』『カラメルIV』にも発がん性が疑われる。タピオカなどの着色にも使われており、プリンなどに使われる糖をこがしたカラメルとは全くの別物だ。
「カップ麺やハム、ソーセージ、かまぼこなど、多くの加工食品に使われている『リン酸』には、特に注意してほしい。カルシウムが体内で吸収されるのを阻害したり、腎機能の低下を招いたりするといわれています」(垣田さん)
日本の骨粗しょう症患者は1000万人以上といわれるが、その8割は女性だという。
※女性セブン2020年7月23日号
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