「日本人よ、強くなりなさい」李登輝元総統の教えと叱咤激励! 河野防衛相「なぜ中韓の了解がいるのか」の言葉に日本人の矜持

「日本人よ、強くなりなさい」李登輝元総統の教えと叱咤激励! 河野防衛相「なぜ中韓の了解がいるのか」の言葉に日本人の矜持
8/8(土) 16:56配信

 【有本香の以読制毒】

 日本人の「国を守る覚悟」が問われている。北朝鮮が小型核兵器を開発したという国連報告書の存在が報じられるなか、日本では「ミサイル防衛」に関する自民党提言について、ある新聞記者が「周辺国の理解が必要では?」と、河野太郎防衛相に質問する事態が発生した。河野氏は「なぜ、了解がいるのか」と突き放した。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起こしながら、共産党独裁の中国は軍事的覇権拡大を強めている。日本は「自由」と「民主主義」を守り抜けるのか。ジャーナリストの有本香氏が人気連載「以読制毒」で迫った。

 台湾の李登輝元総統が先月30日、97歳の生涯に幕を閉じた。台湾を民主化に導き、中国共産党のミサイルを用いた脅しにも一歩も引かず、「自由と民主の国」台湾を守り抜いた。その見事な生き様は、まさに「アジアの巨星」と呼ぶにふさわしい。その巨星ついに墜つ、の喪失感は多くの日本人にも広がっている。

 「哲人政治家」の名を恣にする李氏は、反面、権力闘争にも長けた鉄人でもあった。その能力あったればこそ、台湾を無血で民主化できたのだ。哲人であり鉄人でもあった偉人は、台湾とともに日本をも愛し、励まし、時折私たちを叱ってもくださった。「日本人よ、強くなりなさい。堂々と自分の国を愛しなさい」と。

 この教えと叱咤(しった)激励に心から感謝をささげつつ、私たちは、李氏が残した「アジアの民主」を守り抜かなければいけない。その気持ちを強くしている。

 ご逝去の報と同時に思い出したのは、李氏が総統を引退した1年後の2001年、病気治療を理由に訪日を希望したときのことだ。この時、李氏の訪日を阻止したい北京の思惑どおりにビザ発給を止めようとしたのが、外務省チャイナスクールと、当時の河野洋平外相だった。

 これに対し、「私人の病気治療を拒むのは人権問題だ」と言って、毅然(きぜん)とビザ発給を決めたのが、当時の森喜朗首相であり、その最側近として、森氏とともに外務省を叱ったのが、若き日の安倍晋三首相(当時、官房副長官)であった。

 このエピソードを思えば、現在、高齢の上にがんの闘病中でもある森氏が「李登輝氏の葬儀に出席か」と報じられたことにも納得がいく。

 それにしても当時、森氏のこうした功績はまったく評価されず、森政権はメディアによって連日不当に貶められ、わずか1年で退陣に追い込まれた。その裏で高笑いしていたのは一体誰だったのか。今こそ、あの時を公正に振り返る必要があろう。

 李氏訪日の一件から20年の時がたった今、格段に波高くなった、わが国の防衛の責任を負っているのが河野太郎防衛相だ。父の洋平氏は、台湾とも、李氏とも良き相性とは言えない「親中派」の代表だったが、最近の河野防衛相の言動には、「父とは対極か」と思わすところが見られる。

 特に、4日の記者会見の光景は象徴的だった。

 東京新聞の記者の「安全保障の見直し(=『ミサイル阻止能力』保有の検討を求める自民党提言)は、周辺国(=中国や韓国)の理解を得られるのか?」という信じ難い質問に対し、河野防衛相が見事な正論を放ったのだ。この質問は例えて言うと、「泥棒の了解を得て新しい鍵を付けるべきだ」とでもいうような、まさに狂気の論理だ。

 これに河野防衛相は「なぜ了解がいるのか」と逆質問で答え、着けていたマスクを外して記者らを睥睨(へいげい=にらみつける)した。

 20年前なら、この発言一つで大臣の首が飛ぶこともあり得た。

 しかし今、河野防衛相はいたって元気で、翌日には戦闘機に乗った自身の写真を冗談交じりのコメント付きでSNSにアップしている。この姿を見て、「日本人よ、強くなりなさい」という李氏の言葉を思い出した。

 河野防衛相は今春、「日本と太平洋島嶼国の防衛大臣会合」をも計画していた。コロナ禍で実現はしなかったが、太平洋島嶼国には、台湾と国交を持つ国が多い。近年、中国が台湾からの「変心」を仕掛けている、ホットエリアでもある。

 果たして、私たち日本人は、強くなったのか。胸を張って「イエス」とも言い難いが、これからはとにかく強く、勇ましくあらねばならない。そうでなければ、私たちの自由も民主も海の藻くずとされてしまいかねないからである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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