民主主義の危機…日本が「ファイブアイズ」に加入すべき「これだけの理由」
8/15(土) 6:31配信
民主主義に迫る危機
いまや「人類の敵」と世界中の先進国から認定されている共産主義中国の傍若無人ぶりは、8月6日の「なぜ世界中で中国との対決が起きるのか、そのシンプルな理由」に至る一連の記事で詳しく述べてきた。
日本は、世界の先進国と比べて媚中派を中心に中国共産党に甘く、つい最近まで習近平氏の「国賓来日」が議論されていたくらいだ。
しかしながら、そののほほんとした日本でも、「香港国家安全維持法」違反の容疑で8月10日に民主化運動の「女神」こと周庭さんと「リンゴ日報」の創業者・黎智英氏が逮捕されたことにはざわついた。
オルレアンの少女と呼ばれたジャンヌ・ダルク(当時10代であったとされる)がフランス軍の兵士を奮い立たせたことは有名だが、中国共産党との戦いの最前線で、「自由の旗」を振る「香港の女神」周庭さんの勇気が、世界中の民主主義支持者の心を鼓舞するのではないだろうか?
9月6日に予定されていた香港立法会の議員選挙について「新型肺炎の感染が広がっており、市民の安全を守るため」として1年間延期されたが、これを額面通りに受け取る読者はいないだろう。
昨年11月に行われた区議会議員選挙で惨敗した香港政府(中国共産党)は立法会の選挙では絶対に負けられないが、いくら弾圧しても民主派への市民の支持は揺るがない。そこで「負け戦」を回避するための「逃げ」を打ったと考えるのが妥当だ。
その間に弾圧を強めて、民主派を壊滅させようとたくらんでいるのであろうが、周庭さんの逮捕は世界中の民主主義者を激怒させた。
彼女と黎智英氏が8月12日未明に保釈されたのも、世界中の民主主義者の声に影響されてのことだと推察される。我々民主主義者が声を上げることは決して無駄ではない。
しかし、民主主義が危機に瀕しているのは香港だけではない。世界的な民主主義の危機の中で、日本の民主主義を守るための有効な手段となりうるのが、第2次世界大戦中にナチス・ドイツに対抗するために生まれたファイブアイズ(UKUSA協定)である。
この5カ国(米・英、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア)はいずれも筋金入りの民主国家である。しかも、光栄なことに、先日英国元首相のトニー・ブレア氏から「お誘い」も受けている。
ファイブアイズとは?
たぶん、多くの読者にとってなじみのない言葉だと思うので、簡単に解説する。
まず、1940年6月に始まったアメリカ陸軍・海軍それぞれの暗号部とイギリスの政府暗号学校の共同作業で、ナチス・ドイツの暗号エニグマが解読された。
1943年には、イギリスのGC&CS(政府通信本部)と合衆国旧陸軍省が「特殊な諜報に関する協定」を、GC&CSと米国陸軍が「信号諜報に関する協定」をそれぞれ締結し、1946年にはソビエト連邦との冷戦に備えて英米の協定を結んだ。
その後、1948年にカナダ、1956年にオーストラリアとニュージーランドが参加している。
つまり、「ファシズム」との戦いから始まり「共産主義」と対抗するためにも重要な役割を果たしたのである。
今、再び共産主義の脅威から民主主義を守るために、大きな役割が期待される。
日本は既に関わっている
注目すべきは、2018年初めからは、日本、ドイツ、フランスが中国のサイバー活動を念頭に会合を開き、ファイブアイズと3国の連携で情報共有の新たな枠組みが作られたことである。日本はファイブアイズから信任される重要な民主主義国家のひとつなのだ。
2020年には、日本、韓国、フランスが参加した枠組みも発足したが、少なくとも現在の文政権では、韓国の関わりなど迷惑なだけであろう。 GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)を、安全保障とは無関係な政治交渉の道具に使う相手など信頼できないというのは、日本だけではなく、米国を始めとするファイブアイズ加盟国に共通した考えである。
英国の新聞であるガーディアンは、対共産主義中国への戦略の観点から日本がファイブアイズへ参加し、6番目の締結国となる可能性があると報じているが、2018年から情報共有している3カ国のうちドイツは、5月25日の記事「人類の敵・中国を大躍進させたメルケル首相『16年間の独裁』」で述べた状況である。実際米国は7月29日にドイツ駐留米軍を約1万2000人削減する計画を発表している。
また、フランスと米国の関係も、特にエリートのボンボンのマクロン大統領が誕生してからは冷え切っている。
実際、ファイブアイズに新たに加盟する国として考えうるのは、今のところ日本くらいなのである。
ブレア氏の誘い
そのような状況の中で、英国のブレア元首相は8月3日までに産経新聞の電話によるインタビューに応じ、共産主義中国が習近平国家主席の下、「ここ数年間で一層権威主義化した」と強い危機感を示した。
その上で、自由主義諸国が連携して中国の脅威に対抗する必要があるとし、「ファイブアイズ」への日本の参加について、「われわれは検討すべきだ」と述べている。
もちろん、ブレア氏はあくまで「元首相」であり、現在の英国首相はボリス・ジョンソン氏である。しかしジョンソン氏も、日本の加盟には前向きなのではないだろうか?
少なくともブレア元首相の発言に対して、否定的なコメントはジョンソン氏からも英国政府からも出ていない。
むしろ、河野太郎防衛相と電話会談したトゥゲンハート英下院外交委員長などが、背中を押す発言をしている。
「反ロシア・媚中」のEU
米国と英国は現在、「民主主義の敵」である共産主義中国との戦いに注力している。特に英国は、50年間の1国2制度の維持を条件に香港の再譲渡・返還に応じた当事者だから怒り心頭である。
それに対して、大陸欧州の代表的国家であるドイツの首相は媚中派のメルケル氏である。また、欧州の国々が最大の脅威と考えているのは、はるか遠い東洋の共産主義中国ではなく地理的に近いロシアだ。
しかしながら、ロシアがプーチン独裁政権であるとは言っても、彼はあくまで「普通選挙」で国民に選ばれたリーダーという立場だ。選挙干渉などの行為は否定できないが、プーチン氏はあくまでメルケル氏同様民意を背負っている。
国民の投票(普通選挙)など一切経ずに、権力闘争で独裁者に上り詰めた共産主義独裁国家の習近平氏とはまったく異なった存在だ。
したがって、英米は「民主主義の敵」共産主義と戦うために「民主化されたロシア」と手を組むことも考えているはずだ。ロシアと中国は似たような共産主義国家と思われがちだが実態は全く異なる。
だから、「反ロシア・媚中」の欧州大陸の国々(EU加盟国)がファイアイアズに参加することは望ましくない。
日本が有力な候補となる理由の1つである。
明治維新、日英同盟
歴史を振り返れば明治維新で英国は新政府を支援した。色々な駆け引きがあったので、単純に言いきることはできないかもしれないが、大雑把な傾向としては間違いがない。
また、日本は第1次世界大戦の時期を中心に日英同盟も結んでいたのである。
同盟が消滅した後、不幸なことに、第2次世界大戦で「民主主義の敵」ナチス・ドイツと組んでしまったが、日英関係には長い伝統と信頼があるのだ。
また、EU離脱後の日英貿易に関する協定交渉も順調に進んでいる。
8月7日、茂木敏充外相は、日英の新たな通商協定を巡り「大半の分野で実質合意した」と発表している。さらに、トラス英国際貿易相と茂木氏の協議では8月末までに大筋合意し、2021年1月の発効を目指すことで一致したとしている。
いまこそ、脱中韓、入英米
「脱亜入欧」という言葉が明治期に流行った。その内容の正当性は色々な議論があると思うが、その後第2次世界大戦に至るまで、日本は「アジアの国々に深入り」し、「欧米の国々から遠ざかる」という真逆の行為を行った。その結果は読者も良くご存じのとおりである。
今、日本は大きな岐路に立たされている。私が思うのは、脱亜ではなく、日本を執拗に攻撃する反民主主義的国家の共産主義中国と共産主義的な文政権の韓国から脱出し、欧州の中でも民主主義の基盤がしっかりしている英米の仲間に入るべきだということだ。欧米とは言っても、EU加盟国(大陸欧州)はかなり文化が違う。
もちろん、「本来の1つの中国」である中華民国(台湾)との関係も強化すべきだ。中華民国では民主主義政府が頑張っている。
現在の急速な世界情勢の展開を見れば、米国が中華民国(台湾)を(1つの)中国の代表として承認することが近い将来にありうると考えても自然だ。そうなれば、世界中の民主国家がそれに続くであろう。
台湾を訪問中のアメリカのアザー厚生長官が8月10日午前、総統府を訪れ、蔡英文総統と会談した。米国が41年前に台湾と断交して以来、台湾を訪問する最高位の高官である。
1972年のニクソン訪中は、世界を驚かせ、1979年の米中国交正常化につながったが、1971年のキッシンジャー大統領特別補佐官の訪中がその予兆であった。
アザー厚生長官の訪台を、キッシンジャー訪中に例えれば、トランプ氏の「電撃訪台」が近いのかもしれない。
「1つの中国」をめぐる1970年代以来の流れが、完全に逆転している。ポツダム宣言の時と同じように中華民国(台湾)が1つの中国として世界中の先進国から認められれば、共産主義中国は、「世界の国々から認められないISIS(イスラム国)のような(共産主義)テロリスト集団」に逆戻りする。
ファイブアイズ+TPP11は無敵だ
政治面だけではなく、「欧米の本当の民主主義国家と、アジアの真の民主主義国家の連携」は、経済面でも強力なパワーになる。
安倍首相のリーダーシップによって取りまとめられたTPP11も大きな力になるであろう。何しろ、TPP11の加盟国にカナダ・オ―ストラリア・ニュージランドのファイブアイズ加盟3カ国が含まれているし、いったんは脱退したものの米国が再度交渉に参加する可能性は十分ある。さらに、英国の参加はかなり真剣に討議されている。
閣僚級会合「TPP委員会」に日本から出席した西村康稔経済財政・再生相は記者会見で、タイや英国の新規参加を後押しする考えを示している。もちろん、中華民国(台湾)加盟の可能性も、今後の展開次第で十分にあり得る。
英米を含めたファイブアイズ加盟国が、すべてTPP11(今後名称は変わるであろうが……)加盟国と重なれば、強力な「民主主義グループ」として世界の中で重要な位置を占めるはずだ。
大原 浩(国際投資アナリスト)
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