不平不満を言いまくると「脳が物理的に変わる」と科学的に判明! 愚痴を言うだけで「深刻なリスク」
日々の仕事と生活の中では気が重くなる案件もあるだろう。思わず不平不満が口をついて出てしまうのも無理はないが、何度も言い続けていれば、そのうち“ネガティブ脳”に変化して幸せからどんどん遠ざかってしまうことが各種の研究で報告されている。
■不平不満を言い続けると“ネガティブ脳”に
大人になれば身長の伸びは止まり、身体はゆっくりと老化のプロセスへと突入していくわけだが、人生の後半戦になってもトレーニング次第でいかようにも開発できるのが脳だ。
脳の持つ変幻自在な可変性は神経可塑性(neuroplasticity)と呼ばれ、新しい神経回路がつながるようにシナプスを変化させることができる脳の能力を意味する。これにより、古い習慣を捨て去り、新しい習慣を獲得し、新たなスキルを学び、成長し、変化し、人間として本質的に“進化”することができるのだ。
脳の神経可塑性によってどんなことが可能になるのか、例えば以下のような好ましい変化を遂げることができる。
●知能の向上
●人生を変え得る新たなスキルの習得
●特定の脳損傷からの回復
●心の知能指数(EQ)の向上
●悪癖とネガティブ思考の除去
この神経可塑性によって脳はいかようにも作り変えられるのだが、この特性は諸刃の剣でもある。能力開発などポジティブな方向に変化させることもできれば、常に不平不満に苛まれる“ネガティブ脳”が形成されてしまう場合もあるのだ。
不平不満を言いまくると「脳が物理的に変わる」と科学的に判明! 愚痴を言うだけで「深刻なリスク」の画像1
神経科学者で作家のアレックス・コーブ氏によれば、うつ病は脳の神経可塑性によって引き起こされていると説明している。
「うつ病といっても、脳自体には根本的な問題はありません。単に神経回路の特定の調整が、うつ病のパターンに向かう傾向を生み出しているということです。このパターンは脳がストレス、計画、習慣、意思決定、その他多くのことを扱う方法に関係しています。それらすべての回路の動的な相互作用です。そしてパターンが形成され始めると、脳全体に数十の小さな変化を引き起こし、ネガティブな負のスパイラルに陥ります」(アレックス・コーブ氏)
つまり形成された“ネガティブ脳”はさらにネガティブな方向へ“強化”されていき、うつ病などの精神疾患を発症することになる。すぐにネガティブな考えが思い浮かぶことはもちろん、ネガティブな現象に敏感になり身の回りの“悪い知らせ”ばかりに気がついてネガティブなスパイラルに陥っていくのだ。
普段から何気なく不平不満や悪態を口にしていると、このようにきわめて深刻なリスクに晒されることになるのである。
■“ネガティブ脳”を“ポジティブ脳”に作り変えるには
ではどうすればよいのか。安心していいのは脳の神経可塑性によって“ネガティブ脳”もまた作り変えられることにある。
“ネガティブ脳”をニュートラルな脳に作り変え、さらに“ポジティブ脳”にするにはどうすればよいのか。オルタナティブ系メディア「Collective Evolution」の記事によれば、まず最初のステップとして自分が普段どのくらい不平不満を口にしたり感じたりしているのかを自覚することから始まるということだ。この自覚なしに、染みついたネガティブ思考を取り除くことはできないという。
しかし長年の習慣からある種無意識的に不平不満を口にし、ネガティブ思考をめぐらせているケースもあるだろう。特に勤務時間中などは自分で自分のネガティブさを自覚するのは困難なことかもしれない。
そこで“不平不満リストバンド”というアイディアが登場している。
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「The Jon Gordon Company」より
このリストバンドは米ミズーリ州カンザスシティの牧師が始めてその後世界的なムーブメントとなった「不平撲滅運動(No Complaints Campaign)」で使われるもので、「不平不満を言わない(No Complaints)」という文言などがプリントされた緩いリストバンドを普段から手首にはめておき、自分が不平不満を口にしたりネガティブな考えが浮かんだことを自覚した時、このリストバンドを外してもう一方の手に付け替えることを課すのである。
このリストバンドをつけることで日常生活の中でいかに不平不満を口にしているのかが自覚できる。家族、友人、同僚にこの運動へのチャレンジを知らせておくことも重要で、自分で気づかなかった何気ない不平不満を周囲から指摘してもらうことができる。そして目指すゴールはこのリストバンドを付け替える必要がなくなった一日がやって来ることであり、さらに一定期間バンドを付け替えなかった日が続くことである。
ではこうして自分のネガティブさを自覚した次には何をしたらよいのだろうか。
米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の心理学者、バーバラ・フレデリックソン教授は、ニュートラルになった脳を“ポジティブ脳”へと作り変える手段としてマインドフルネス瞑想を推奨している。
フレデリックソン教授の研究チームが3カ月を費やした研究で、毎日瞑想する人はそうでない人よりもポジティブな感情や高揚感を多く感じていることを突き止めている。
「毎日瞑想をしている人は、精神的充実、人生の目的、社会的支援を見いだし、病気の症状を改善し続けています」(フレデリックソン教授)
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画像は「Wikimedia Commons」より
マインドフルネス瞑想について、わかりやすく解説されているウェブサイトやブログ、動画などは最近ではいくつもある。そうしたリソースを活用し1日15分から20分の瞑想を続けることで脳を作り変え、人生全体をも好転させることができるということだ。気になる向きは試してみてもよいのだろう。
参考:「Collective Evolution」、ほか
文=仲田しんじ
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