「遺伝子組換え食品」表示の厳格化で「食の安全」が脅かされる

3/17(火) 7:00配信マネーポストWEB
「遺伝子組換え食品」表示の厳格化で「食の安全」が脅かされる

「遺伝子組換えでない」という表示を意識して選んでいるという人は多いだろう。その表示の基準が、2023年から変わることを知っているだろうか。それによって、私たちが安心できる食品を選ぶ権利が失われていく。「お得」に踊らされていると、食卓には危険ばかりが並ぶかもしれない──。

 以前、本誌・女性セブンで、「肥育ホルモン牛肉」の危険について詳報した(マネーポストWEBにも掲載)。米国で育てられ、EUでは全面輸入禁止になっている発がん性リスクのある牛肉が、日本では2020年1月から値下げして販売されるようになったという内容だ。

 そこには、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を離脱し、関税率が他国より高い米国に配慮した日本が、関税率を引き下げる「日米貿易協定」を発行したという背景がある。

 残念なことに、世界中で禁じられながらも、日本人だけが食べている恐怖の食材は、肥育ホルモン牛肉以外にもある。「遺伝子組換え食品」もその1つだ。

 日本に遺伝子組換えの農作物が初めて輸入されたのは、1996年のこと。現在は、とうもろこし、大豆、西洋菜種、じゃがいも、テンサイ、パパイヤ、ワタ、アルファルファの8種類が輸入されている。解禁当初は、その安全性をめぐって世間を騒がせたが、近年は批判の声があまり聞こえなくなった。しかし、決してそれは、遺伝子組換え食品が減ったからではない。食政策センタービジョン21主宰の安田節子さんは強調する。

「昨年10月に、遺伝子組換え食品の第2世代と言える『ゲノム編集食品』が解禁されたので、関心がそちらに向いているだけです。日本は一貫して米国の要望に忠実に応じ、遺伝子組換えの作物を次々に認可しています」

「ゲノム編集食品」とは作物が本来持っている遺伝子を“破壊する”技術で、安全性が定まっていないことから、EUでは規制されている。日本にはまだ出回っていないが、米国にならって、安全性の審査や表示の義務を行わないことが決定している。

 一方、遺伝子を“入れる”遺伝子組換え食品は安全性審査や表示が義務付けられている。それは、人体に害を及ぼす危険がいくつもの研究で明らかになっているからだ。

ほとんどのマウスががんだらけになった
 遺伝子組換え食品の危険性は、実験でも立証されている。

 仏のカーン大学で行われたマウス実験では、遺伝子組換えのとうもろこしを与え続けたマウスは、4か月目からがんを発症し始めることがわかった。さらにマウスの一生にあたる約2年の実験で、ほとんどのマウスはがんだらけになった。動物実験でこれほど明らかな影響が出るのだから、人間にも影響が出る可能性は充分考えられる。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが指摘する。

「遺伝子組換えの技術が開発されてから、まだ20年程度しか経っていません。継続的に食べ続けると、人体にどんな影響を及ぼすのかは誰にもわからない」

 食の安全に詳しいフリージャーナリストの小倉正行さんも続ける。

「現在、流通している遺伝子組換え食品は、急性か亜急性の毒性についてしか調査されていない。発がん性など、慢性的な毒性については未調査です。言い換えれば、私たちは、長い期間をかけて人体実験を受けさせられているようなものです」

 ならば、遺伝子組換え食品はできるだけ避けたいところ。しかし、「遺伝子組換えでない」という表示にもカラクリが隠されている。

2023年4月以降、表示が消える
 日本では、遺伝子組換え作物を、その食品の原材料として多い方から3番目までに使用し、さらに使った分量が全体の5%以上の場合に「遺伝子組換え食品」となる。豆腐の原料に遺伝子組換えの大豆を総重量の5%以上使えば、その豆腐には「遺伝子組換え」と表示する義務があるのだ。一方で、規定の分量より少ない場合は「遺伝子組換えでない」と任意で表示することができる。

 ただし、遺伝子組換え作物を、油やしょうゆ、液糖などに加工した場合や、遺伝子組換えの餌で育った家畜の肉には表示義務がないなど、さまざまな“例外”もある。

「EUでは、遺伝子組換えの原材料が0.9%以上入っていれば、表示義務があります。家畜の餌にした場合も同様です。日本の基準は消費者にわかりにくいうえ、ゆるいといえるでしょう」(鈴木さん)

 しかし、2023年4月からは、表示方法が「厳格化」される。遺伝子組換えの混入率が0%でなければ、「遺伝子組換えでない」という任意表示が認められなくなるのだ。一見、安心できそうに思えるが、実態は異なる。安田さんが話す。

「これまで、遺伝子組換えの大豆が5%未満のしょうゆには『遺伝子組換えでない』と表示ができました。しかし、厳格化によって、国産大豆100%以外の商品から、その表示が消えてしまう。すると、遺伝子組換えの大豆を5%未満しか使っていないしょうゆも、100%近く使っているしょうゆも、等しく“遺伝子組換え”のしょうゆとなるため、消費者は混入リスクの少ない商品を選ぶことが不可能になります。

 さらに、表示を差別化できなくなったメーカーは、分別輸入をやめ、遺伝子組換えが大半の大豆を使わざるを得なくなるでしょう。なぜなら、価格の高い混入率5%未満の大豆を使う意味がなくなるからです」

 日本がこれほど遺伝子組換えの作物を輸入している理由は、米国との食文化の違いも大きい。輸入されている8種類の作物を見ると、米国で盛んに作られている「小麦」が入っていないことに気づく。なぜなら、小麦はパンやパスタ、ビールなどの主原料であり、“人間が直接、口にする作物”と捉えられているため、遺伝子組換えの小麦は生産されていないからだ。

「米国穀物協会の幹部は過去に、“大豆やとうもろこしは家畜の餌だから”と発言しています。つまり、米国では、家畜に食べさせる程度にしか遺伝子組換え作物の安全が保障できないということです」(鈴木さん)

 だからといって、米国産の小麦が安全なわけではない。残留農薬の危険がある。一般社団法人農民連食品分析センターの調査によると、国産小麦を使った製品を除いて、国内で一般的に市販されている多くの食パンから、除草剤の成分である「グリホサート」が検出されたという。

「グリホサートに発がん性があると、国際がん研究機関(IARC)が2015年に警告しています。グリホサートが入った除草剤は、日本が輸入している遺伝子組換え作物に多用されています。遺伝子組換え作物には、二重の危険があるということです」(安田さん)

 これほど危ない食品が、なんの表示もなく出回っているとなると、頭を抱えたくなる。食卓を守るために、まずは何をするべきだろうか。安田さんは、「油を見直してほしい」と言う。

「遺伝子組換えの作物を最も使っているのが植物油です。菜種油、コーン油、大豆油はすべて遺伝子組換えだと考えていい。代わりに、ごま油、オリーブ油、米油、紅花油(サフラワー油)、国産の菜種油を選んでください」

 クッキーやケーキなどの菓子類は、危険な植物油から作られるマーガリンやショートニングではなく、バターを使ったものを選びたい。

 ただし、乳製品には要注意。米国では乳牛に遺伝子組換えの合成牛成長ホルモンを注射している場合があり、この牛乳を飲むと、乳がんの発症率が7倍増えるという論文も発表されている。

「極端な話ですが、輸入食品はなるべく避けるべき。私たちにできることは、積極的に国産の農産物を食べることです。少々値は張りますが、輸入食品の安さに飛びついてばかりいると、自分たちの命を縮めることになりかねません」(鈴木さん)

 不要な買い占めに走るのではなく、将来を見据えた買い物を心がけたい。

※女性セブン2020年3月26日・4月2日号

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