「韓国の歴史認識は嘘のパレード」 『反日種族主義との闘争』の編著者が語る、“低級な歴史意識”に侵された韓国
9/14(月) 6:01配信
『反日種族主義との闘争』(文藝春秋)
慰安婦問題や竹島、徴用工裁判に対する韓国の反日歴史観を実証的に批判した『反日種族主義』(文藝春秋)は、2019年の発売以降、40万部のベストセラーとなった。刊行直後から韓国内で巻き起こった批判に応える形で、李栄薫氏らが再び筆をとった 『反日種族主義との闘争』 (文藝春秋、2020年9月17日発売)からエピローグの一部を特別公開する。
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2018年10月30日、この国の大法院は、呂運沢(ヨウンテク)など四名の原告が日本の新日鉄住金(現日本製鉄)を相手に起こした訴訟において、同会社は彼らに1億ウォンずつ慰謝料を支給せよ、という判決を下しました。原告4名は1943~45年、日本で新日鉄住金の元の会社である旧日本製鉄の労務者として働きました。彼らは、会社から賃金をきちんと払ってもらえなかった等の“反人道的不法行為”を受けた、と主張しました。大法院は原告たちの肩を持ちました。肩を持ちながら、韓国内にある新日鉄住金の資産を差し押さえました。この事件で両国の関係は一挙に、以前には見られなかった緊張状態に入りました。日本政府は韓国を戦略物資貿易のホワイト国家リストから除外し、戦略物資の輸出に個別許可制を導入しました。韓国政府は、日本との軍事情報協定ジーソミアを破棄する方針を明らかにしました。このときは米国政府が強力に介入し、危機を免れましたが、両国関係は今もなお、いつ破裂するか分からない危機状態にあります。
私は大法院の判決後、判決文を手に入れ読んでみました。そうしてみて、原告四名が主張している相当な部分は信頼できない嘘である、と判断しました。いささか性急に見えるかも知れませんが、私がそのような判断を下したのは、既に10年前に37名の労務者をインタビューし、原告の四名と類似した主張と多く接し、それらの相当な部分が嘘であるのを実感したことがあったからです。それで前回の『反日種族主義』の中で、我が高邁なる大法院の判事の皆さんに、「嘘の可能性の高い主張を検証しない裁判は果たして有効なのか?」と訊いたのでした。
韓国の名誉は大きく毀損された
以後、この本を準備するに当たり朱益鍾(チュイクチョン)と李宇衍(イウヨン)の2人の博士が、呂運沢をはじめとした原告4名の経歴と彼らの証言を綿密に検討しました。その結果がこの本の第6章と第7章です。結論を言えば、原告たちの主張の相当の部分は嘘であるという点で、私の予断は間違っていませんでした。彼らは日本製鉄の募集広告に積極的に応募し、賃金をきちんと受け取っていました。未払金が貯金の形で残っていたのは事実ですが、それを取り立てることができなかったのは、終戦前後の混乱のためでした。相当額の未払金を残していた原告は4名中2名ですが、それぞれ496円と467円で、当時の4カ月分の賃金程度でした。それも、他の労務者には適用されない彼らだけの特殊な事情によるものでした。彼らが受けたと主張する会社からの虐待行為は、戦時期の軍需工場の労務管理が、一般的に軍事的規律に立脚していたためでした。そのような視点で、もう一度第6章と第7章を読んでいただけたらと思います。ただ、私の予断で間違って記述した部分があるので、ここで修正したいと思います。『反日種族主義』で私は、「原告たちを日本の大阪から朝鮮に引率した寄宿舎の舎監は朝鮮人だった」旨を記しましたが、実は日本製鉄の日本人職員でした。
原告中の2名が日本で訴訟を起こしたのは1997年です。その後、日本の最高裁判所が彼らの請求を最終棄却したのは2003年です。彼らは2005年から国内での法廷闘争を開始しました。目的は、いわゆる“強制連行と強制労働” 被害に対する慰謝料を貰う、ということです。彼らは、彼らの闘争を正当化するため、「月給を貰ったことがない」「会社に騙された」「会社から虐待された」などといった虚偽の記憶を創り出し、彼ら自身を、彼らの家族を、彼らの国家を、さらには国際社会を騙しました。
彼らの行為を、一般の日本国民はどのように受け止めるでしょうか? 近世の日本では、藩を離脱した者が幕府に訴訟を起こした場合、自身の君主に背いたとして、まずその者の首を打ってから訴状を開いた、と言います。ある新生国の国民が、国境を越えて元支配国に行き、金銭補償を目的に訴訟を起こすのは、そうでなくても脆弱なその国の名誉を大きく損なうことです。しかも、1965年に両国が国交を正常化し、将来提起される一切の請求権を含めて完全に清算する、という協定を締結した事案でもありました。
国家危機の発生
彼らが真に自分たちの未払金の支払いを要求するつもりだったなら、初めから請求権協定に従って、彼らの国家を相手に訴訟を起こさなければなりませんでした。彼らが日本で日本政府と企業を相手に訴訟を起こしたことで、この国の名誉は大きく毀損されました。彼らの目的が未払金の支払い要求にあったのなら、彼らは盧武鉉政府が実施した補償で満足すべきでした。未払金の資料があるので、申請すれば受け取れたでしょう。彼らの未払金400~500円に対する当時の補償額は、80万~100万ウォンでした(1円=2000ウォン)。しかし彼らは、それで満足しませんでした。それで2018年まで執拗に訴訟を続け、ついに21年ぶりに1億ウォンを取得できるかも知れない大きな成功を手にしました。
原告たちの繰り広げた嘘の行進は、決して一人ぼっちの心細いものではありませんでした。多くの社会運動家と歴史家たちが、それに加わりました。彼らが日本で敗訴したというニュースが届くたびに、韓国人の種族主義的怒りは沸き上がりました。嘘の行進はますます膨らんで、国民的パレードに変わって行きました。当初彼らが起こした日本での訴訟は、日本のいわゆる“良心的”知識人によって企画され、支援されました。今日両国の関係がこれほど険悪になっているのにも、彼らの“良心”が大きな役割を果たしました。彼らの“良心”は、結局は韓国人の“非良心”を助長しました。彼らの“良心”を引っくり返せば、そこには、二等民族韓国人をいつまでも世話しないといけない、という傲慢な姿勢が根を張っていることが分かります。
国内外に繰り広げられる嘘のパレードを、いつまでも続けさせるわけにはいきません。遅かれ早かれ国家の危機を招来するだろうということは、すぐに予想がつきます。私にとってここ数年間というものは、そのような危機感の連続でした。2018年10月末の大法院の判決が、その起爆剤でした。2005年から国内で起こされた原告たちの訴訟は、地方法院(日本で言う地方裁判所)と高等法院で敗訴しました。彼らを復活させたのは、2012年の大法院判事金能煥(キムヌンファン)でした。報道によると彼は、「国を再建する心情で」事件を高等法院に差し戻したそうです。この言葉が、一国の法秩序と国家体制を守護すべき判事たる人の口から出てもよいものでしょうか。私には納得できかねます。彼にとってこの国の歴史は、唾棄すべき“不義と機会主義者が勢力を持った歴史”に過ぎなかったようです。
2018年10月末に出た大法院の判決文が、歴史意識と法理においてどれほど脆弱であるかに関しては、朱益鍾博士が書いたこの本の第8章を参考にしてください。朱益鍾博士は、この判決について「触れればすぐに倒れてしまう“きびがらの家”に過ぎない」と記しています。「この国の大法院の拭い去れない“黒い歴史”だ」とも記しています。我が高邁な判事や法学者の皆さんに、必ず読んで勉強してほしい貴重な内容です。一体何をどうしたら、このような悲劇的な判決を下すことができるのでしょうか? この本の第16章で指摘しましたが、ここで再び思い起こします。この国の法律家たちの歴史意識は、ひと言で言って大きな空白です。第16章では、この国の法制度が近代化した歴史に対する理解が法学教授や若い検事に欠如していることを、その証拠として挙げました。
敵対感情が国家危機の根源
大法院の判事たちが作成した判決文にも、同じ証拠を見つけることができます。彼らは「日帝の朝鮮統治は不法だ」としています。判決文はその点を大前提にしています。しかし、日帝のその“不法行為”によって、彼らに判事の法服を着せる今日のような近代化された司法制度が成立しました。大法院の判事たちがこのような矛盾を認知できないのは、彼らもまたこの国の司法制度の歴史についての理解が欠如しているからであり、あの判決文はそのことを暴露しています。彼らには、近代文明の根本要素と言える個人、自由、私権、市場に対する信念がありません。成長と出世の過程でそのような教育を受けたり、心の深層に届く読書をしたりする機会がなかったように見受けられます。彼らの法知識の底に流れているのは、没歴史の機能主義だけです。
その認識の空白を、いつからか低級な歴史意識が埋め尽くし始めました。「公は尊く、私(し)は賤しい」という、朝鮮性理学が見せる個人と私権に対する反感、まさにそれでした。朝鮮王朝を敗亡させた、祖先から受け継いだ負の精神遺産でした。現実的には、自由より正義を重視する法実定主義であり、個人より社会を優先する全体主義であり、対外的には不変の敵対感情を基礎に置く、まさに反日種族主義です。それが今日、この国の司法部を支配する時代精神として、国家危機の根源を成しているのです。
李栄薫
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