WHOもテドロスも、そして中国も「詰み」だ…米政府発表の重大な意味

WHOもテドロスも、そして中国も「詰み」だ…米政府発表の重大な意味 「カネの流れ」が明らかになるのか

2020年4月24日 6時0分 

現代ビジネス

【長谷川幸洋】WHOもテドロスも、そして中国も「詰み」だ…米政府発表の重大な意味 「カネの流れ」が明らかになるのか

大統領補佐官の「仰天発言」

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をめぐって、米国が本格的に中国の責任追及に乗り出した。中国は否定しているが、湖北省武漢の研究所からウイルスが流出した、との見方が有力になりつつある。日本も対中関係の見直しを急ぐべきだ。

米国のマイク・ポンペオ国務長官は4月22日の会見で、新型コロナウイルスについて「中国が世界保健機関(WHO)にすぐ報告しなかった、と確信している。報告した後も、すべての情報を共有せず、危険性を隠蔽した」と中国を批判した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200423/k10012401511000.html)。

ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も21日、ラジオのインタビューで「WHOは中国に支配され、中国のプロパガンダ(宣伝)の道具になっている。米国は約5億ドル支払っているが、中国は4000万ドルだ」と語った。

そのうえで、同氏は「中国が影響力を持つために、別に資金を支払ったのかどうか、詳細に調査している」と述べた。ドナルド・トランプ大統領はすでに、WHOへの資金拠出を停止する方針を表明しているが、米国は中国の「裏金」を疑っているのだ。

私は、ポンペオ国務長官よりもオブライエン大統領補佐官の発言に注目した。というより、仰天した。なぜか。

米政権が「安全保障に関わる裏金調査」をするのは、珍しい話ではない。それどころか、日常的にやっている、とみていい。テロを未然に防ぐには、舞台裏で起きている「カネの流れ」を追及するのが、有力な手がかりになるからだ。

実務を担うのは、税務金融当局もさることながら、実質的には中央情報局(CIA)や連邦捜査局(FBI)などの情報機関である。今回は中国やWHOなど外国絡みなので、実行部隊は海外案件を扱うCIAが中核とみて間違いない。

トランプ政権は、今回のパンデミックを国家安全保障に関わるテロ並みの重大問題と認識しているのだ。これが1つ。

まもなく徹底追及が始まる

それだけではない。大統領補佐官がラジオで裏金を調査中と公言したとなると、それは「いま調査している」などという悠長な話では、まったくない。「すでに核心部分の調査は終わった」とみていい。少し考えれば、それは分かるだろう。

CIAが「いま、オレたちは裏金調査をしてますからね」などと公言するだろうか。するわけがない。そんなことを言ったら、相手は大慌てで証拠隠滅を図るに決まっている。敵に塩を送るどころではなく、捜査を自ら潰したも同然になってしまう。

この種の調査は秘密裏に開始され、秘密裏に終わる。国家安全保障問題担当の大統領補佐官は、作戦全体の方針決定と指揮をとる事実上の司令官である。もちろん、内容は大統領に逐一、報告されている。CIAとFBIはその手足だ。

以上の体制の下で、トップの大統領補佐官がラジオで「詳細に調査している」と公言したのは「もう調査は実質的に終わった」という話なのだ。終わったから、調査中と公表した。もっと言えば、調査を終えただけでなく「クロの証拠を押さえた」とみて間違いない。

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これまた、考えれば分かるだろう。調査して、もしも何も出ていなかったら「調査中」などというわけがない。それでは、自分たちの無能と失敗を白状するようなものだ。証拠を握るまで、全力で調査を続行する。それまでは一切、外に漏らさない。当然だ。

したがって、オブライエン氏の「詳細に調査している」発言は「握った証拠を基に、これから徹底追及するぞ」という戦闘開始宣言なのだ。これを聞いたWHOのテドロス・アダノム事務局長ら幹部は、いまごろ脂汗を流しているだろう。

WHOは終わったも同然

焦りのあまり、テドロス氏たちが証拠隠滅に動けば、罠にハマったも同然になる。焦って動くのを待つために「調査中」と公言した可能性もある。米国は甘くない。CIAは逐一、カネの動きを含めて、動静を監視しているはずだ。

テドロス氏だけではない。

ブルース・エイルワード事務局長補佐は昨年12月、WHOが中国に派遣した調査団の責任者を努めていた。彼は会見で「もしも、私が新型コロナウイルスに感染したら、中国で治療を受けたい」とまで語っていた。ゴマすりも極まれり、である。

米国は、これからどう動くのか。

私は「テドロス氏らを突破口にして、本丸の中国を締め上げるネタを探す」とみる。もしも、テドロス氏ら幹部が中国から裏金をもらって、新型コロナウイルス問題の真相究明に手心を加えていたり、情報操作をしていたとすれば、彼らは中国による工作の全容を知る重要証人になる。

米国は、裏金の証拠を武器にテドロス氏らを締め上げる、そのうえで、自発的辞任を材料に取引をもちかける可能性もある。「最低限の面目は保ってやるから、中国の工作について全部、吐け。そのうえで、責任を認めて辞任しろ」という話である。

私は、もう「テドロス氏らは終わったも同然」と考える。WHOという組織も終わった。スパイかサスペンス映画だったら、最重要証人は、ビルから飛び降りて不自然死を遂げるような局面ではないか。下手人はだれか、言うまでもない。

問題は中国である。

「武漢研究所」に関するスクープ

中国はパンデミックの責任を逃れるのに懸命だが、WHOの幹部が真実を喋れば、窮地に立たされる。映画のような展開にならないとすれば、いま、なんとか言い逃れを考えるのに必死だろう。だが、逃げ場はあるだろうか。

中国の現地調査をしたエイルワード氏はじめWHOは、中国による証拠隠滅の証拠をつかんでいながら、隠してきた可能性がある。オチたWHO幹部から、ボロボロと中国本体に関わる証拠が出てくるかもしれない。

新型コロナウイルスが武漢から発生したのは間違いないが、4月8日公開コラムで指摘した武漢ウイルス研究所からの流出説が最近、あらためて注目を集めている(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71583)。

米紙「ワシントン・ポスト(WP)」は4月14日付で「コウモリのコロナウイルスを研究していた武漢研究所の安全性について、国務省の電報が警告を発していた」と題する記事を掲載した(https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/04/14/state-department-cables-warned-safety-issues-wuhan-lab-studying-bat-coronaviruses/)。

それによれば、米国務省は2018年1月、科学担当外交官ら専門家を数回にわたって武漢ウイルス研究所に派遣し、その活動を調べた。調査団は調査結果を2通の電報にして、国務省に送っている。

WPは最初の1通である18年1月19日付の電報を入手した。それによれば、電報は「研究所を安全に運営するために必要な、適切に訓練された技術者が圧倒的に不足している」と報告していた。

「中国の賠償問題」もある

研究所は当時、テキサス大学医学部などから支援を受けていたが、中国はさらなる支援を求めていた。電報は「米国は研究所に一層の支援を提供すべきだ。コウモリのコロナウイルス研究は重要であると同時に、危険であるからだ」と指摘し、次のように書いていた。

「コウモリに由来するウイルスは、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のように、ヒトに感染してSARSのような疫病を生じさせる可能性がある。将来のコロナウイルスの大爆発を予測し、予防するために、監視と研究が決定的に重要だ」。まるで、今日の事態を正確に予期していたかのようだ。

研究所は18年3月、米調査団の訪問を公表する英語のニュースリリースを出したが、今回のWP記事が掲載される前の週に突然、削除された、という。

このWP記事は大きな反響を呼び、その後「FOXニュース」も続報を出している。それによれば、米国の複数の担当者が「中国は生物兵器としてだけでなく、ウイルスを扱う能力が米国と同等か、それをしのぐことを示すために開発を続けていた」と語った、という(https://www.foxnews.com/politics/coronavirus-wuhan-lab-china-compete-us-sources)。

こうした動きを受けて、米国ミズーリ州は中国政府や中国共産党の誤った対応によって、膨大な経済的損害を受けたとして、責任追及と損害賠償を求める訴訟を同州セントルイス連邦地裁に提起した。州による提訴はこれが初めてだ。提訴はこれからも世界中で続くだろう。

中国の賠償問題については、4月26日発売の「月刊Hanada」6月号の連載「未来を読む!」でも詳述した。こちらもぜひ、ご参照いただきたい。

日本はどうすべきか

さて、日本はどうするのか。 私は、4月21日に収録したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一の『NEWSチャンネル』」で、西村康稔・新型コロナウイルス対策担当相をゲストにお招きし、感染対策とあわせて、中国の責任問題をどう考えるか、率直に聞いてみた(https://www.youtube.com/watch?v=0lVQMvhDo3c&list=PL6vmlngLTe5BJ1p8szg8TDi48pBP-PRxu)。

西村氏は「武漢で発生したのは間違いない。これはWHOも認めている。かつてはSARSもあった。事態が落ち着いた後に、原因究明や再発防止策は教訓として、しっかりやっていかなければいけない」「マスクや防護服、アビガンの原液など中国に依存していた。すでに予算もつけているが、長い目で見て、サプライチェーンを強靭化、多層化していくことも考えていかなければならない」と語った。

大臣の立場で、現段階では、これが精一杯の答えだろう。それでも問題意識を共有しているのは、確認できた。ぜひ、がんばっていただきたい。

最後に、今週も英紙「フィナンシャル・タイムズ」の各国感染グラフを紹介しよう(https://www.ft.com/coronavirus-latest)。

最新の4月22日版を見ると、日本の感染者数はいま、ピークに達しているようにも見える。そうだとすれば、ここが辛抱どころだ。5月の連休を気を緩めずに乗り切れば、なんとかなるかもしれない。

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