日韓関係を壊したのは誰か? 竹島上陸、通貨スワップ終了、告げ口外交…

日韓関係を壊したのは誰か? 竹島上陸、通貨スワップ終了、告げ口外交…

良好だった10年前から坂道を転がるよう

 冬季五輪が開催された韓国江原道平昌の私設植物園に「永遠の贖罪」という像が設置された。日韓関係悪化の極北とも思われる事態を目の当たりにしたいま、改めてこの10年を振り返ってみたい。韓国では「イザカヤ」ブーム、日本ではヨン様・K-POPブームがピークを迎えていたあの頃から、「3・11」による風評被害、慰安婦像設置、通貨スワップ、告げ口外交、世界文化遺産登録の阻止運動……。関係崩壊の火種を起こすのはいつも隣国だった。

10年前のソウルでは「イザカヤ」で「ダイギンジョウ」ブームが

 10年前、日韓関係は良好だった。2010年頃の韓国は第2次日本食ブームがピークを迎えていた。ソウル五輪と前後して第1次日本食ブームがはじまり、日式レストランが誕生して、日本食は高級料理として定着した。

 第2次日本食ブームは日本酒が牽引した。日本酒は「サケ」と呼ばれ、「イザカヤ」と呼ばれた日本酒を提供する店が増殖し、人々は「ダイギンジョウ」や「ジュンマイシュ」を違いもわからず懐事情で注文した。200を超える銘柄が韓国に集まった。

日本人ご用達だったロッテワールド&ロッテタワーも

 一方、日本はヨン様人気が牽引した韓流ドラマブームは収束したが、変わってK-POPが若者を中心に広がった。

 韓国は日本酒ブーム、日本はK-POP旋風が巻き起こり、2010年の訪日韓国人は前年比53.8%増の244万人に達し、訪韓日本人も300万人を超えるなど、訪韓日本人と訪日韓国人と合わせた日韓往来数は500万人を突破した。

 翌11年3月に日本を襲った東日本大震災の後、韓国の日本酒ブームは終焉した。福島原発の事故で、日本の食品は放射能に汚染されているという噂が流布したのだ。

「フクシマ」と同じ「フク」で始まるという理由から福岡県産の食品も敬遠され、当局は沖縄産の黒糖の輸入すら拒絶した。福岡や沖縄より福島に近い日本海から韓国の漁港に水揚げされた魚介類はノーチェックだったのだが。

 訪日韓国人は激減したが、訪韓日本人は増加した。

慰安婦像の設置から大統領として初の竹島上陸
告げ口外交の果てに

 そのように良好だった日韓関係に慰安婦支援を標榜する挺対協(現・正義連)が水を差した。2011年12月14日、ソウルの日本大使館前に慰安婦像を設置したのだ。道路を管理するソウル市鐘路区は設置を許可せず、設置後も撤去や移動を求めたが、設置を強行した挺対協が従うことはなかった。

 このときは良好な関係維持に尽力した日韓両政府だったが、翌年、決裂することになる。

 2012年8月10日、李明博元大統領が韓国大統領としてはじめて竹島に上陸し、日韓関係に亀裂が走った。上陸計画を事前に知った日本政府は韓国政府に中止を申し入れたが退けられた。野田政権は武藤正敏駐韓国大使を即日帰国させた。

 少し前の2011年10月、日本銀行と韓国銀行は30億米ドル相当だった円-ウォン通貨スワップを300億米ドル相当に増額していた。増額部分は1年ごとの更新が見込まれていたが、関係悪化を受けて期限が到来した12年10月31日、一度も更新することなく終了し、ベースとなった円-ウォン通貨スワップも13年7月の期限とともに終了した。

 2013年2月、朴槿恵前大統領が就任し、両国民は関係改善に期待を寄せた。彼女は日韓基本条約を締結した朴正煕元大統領の娘であり、また日本贔屓で知られている。しかし、実際は違っていた。朴前大統領は13年5月の訪米以降、告げ口外交を展開し、その米国で同7月に韓国外初の慰安婦像が設置された。

 政府間がギクシャクすると民間交流も悪化の道を辿った。朴槿恵元大統領が告げ口外交をはじめた頃、観光業を中心に関係改善を求める声が広がったが、徐々に小さくなっていった。爆買いの中国人旅行者が急増し、訪韓日本人が減ってもそれ以上に中国人がお金を落とすようになったのだ。

輸入制限強化、WTO提訴、世界文化遺産登録の阻止
シャトル外交復活など当初は融和ムードだったが

 14年7月には日本人ご用達だったロッテホテルが、在韓日本大使館主催の自衛隊創設60周年記念レセプションを前日になってキャンセルした。一方的な通告を受けた日本大使館は、会場を日本大使公邸に移して事なきを得たのだが……。

 一方、「中国人民解放軍建軍87周年記念レセプション」は、その2週間後に予定通りロッテホテルで行われた。ロッテホテルの宿泊客は2013年まで日本人が45%を占めていたが、2014年は25.7%に減り、15%だった中国人は30%近くまで倍増する。

 翌15年に入ると、日韓の葛藤は国際舞台に場所を移した。

 福島原発の事故を受けて各国は日本産食品の輸入を制限したが、時間が経つに連れて制限を緩和し、あるいは解除する国が増えていった。そのなかで、韓国は輸入制限を強化した。

 日本政府は15年5月、韓国の輸入制限強化を世界貿易機関WTOに提訴した。それに対し、韓国はユネスコの諮問機関「イコモス」が勧告した軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録を阻止する運動を開始した。

 雪解けの気配が見え始めたのは15年11月だった。同月1日に3年半ぶりとなる日中韓首脳会談がソウルで行われ、翌2日に安倍首相と朴前大統領が日韓首脳会談を行なった。

 日中韓首脳会談は2008年の日本を皮切りに各国持ち回りで行われてきたが、2012年に中国北京で開催された後、日韓関係と日中関係が悪化して中断していた。日韓の首脳会談は2014年3月26日に当時の米オバマ大統領が主催した日米韓首脳会談以来だった。

 同2015年12月、日韓両政府は慰安婦問題で合意し、翌16年8月、日本政府は合意に基づいて10億円を送金した。韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」は合意した時点で存命だった46人に1人当たり1億ウォン(約970万円)を支給し、合意以前に死去した199人の遺族に2000万ウォン程度を支給することを決めた。11月には日韓秘密軍事情報保護協定GSOMIAを締結するなど関係改善の兆しが見え始めた矢先、ふたたび慰安婦団体が妨害したのである。

文在寅と問題人、韓国語での発音は同じ
 合意から丸一年となる2016年12月28日、釜山の市民団体が日本総領事館前の歩道に慰安婦像を設置。日本政府は慰安婦合意に反するとして撤去を求めた。道路を管理する釜山市東区はすぐに像を撤去したが、30日には一転して設置を許可。日本政府は対抗措置として長嶺安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事を一時帰国させた。

 本来は韓国政府が対応すべきところだが、直前の16年12月9日に朴槿恵前大統領が国会の弾劾議決を受けており、首相に相当する黄教安国務総理が代行していた。大統領に権限が集中する韓国で国務総理の権限は限られ、政府は機能不全に陥っていたのだ。

 在韓大使の不在は3か月近く続き、その間、大使館は臨時代理を務める鈴木公使のもと、メール等で長嶺大使の指示を仰ぎながら大使不在の長期化に対応する体制を整えた。当時、筆者は鈴木公使と趣味仲間だったが、会うたびに疲れていく様子が見て取れた。

 17年3月10日、韓国憲法裁判所が朴前大統領の罷免を決め、5月10日、文在寅政権が誕生した。文在寅大統領は、朴槿恵前政権を断罪する流れで慰安婦合意の破棄を掲げたが、それ以外に反日姿勢を見せることはなかった。

 文大統領は7月7日、G20が行われたドイツ・ハンブルクで安倍首相と首脳会談を行い、2009年を最後に中断していた日韓首脳が相互に相手国を訪問するシャトル外交を復活させることで合意するなど雪解けムードが復活した。

 そして、民間交流も活発化した。2017年の訪日韓国人は700万人を超え、訪韓日本人と訪日韓国人の合計は945万人となった。日韓往来1000万人時代が目前に迫ったのだが、文在寅はやはり問題人だった。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月8日 掲載

新潮社

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