韓国…セクハラ・パワハラ大国、何でもちゃぶ台返しの「甲乙問題」とは?

韓国…セクハラ・パワハラ大国、何でもちゃぶ台返しの「甲乙問題」とは?
7/23(木) 5:58配信

デイリー新潮

アルバイトの90%以上がパワハラを経験

 為政者のセクハラもナッツ姫や水かけ姫のオラオラ不祥事も、歴代大統領が前任者の約束を反故にするのも、みんな「甲乙(カプチル)問題」に関連していた。韓国の憲法上、立法権は国会、司法権は法院に属すが、大統領は行政権、立法権、司法権に軍事権を加えた4権の長として君臨する。組織のトップが絶対権限を持つのは政府や自治体に限ったことではなく、民間にも“社長第一主義”が蔓延している。

 ***

 朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長は、女性秘書によるセクハラ暴露がきっかけで自ら死を選んだとされる。為政者のセクハラが問題になったのは、近年珍しいことではない。たとえば今年4月、釜山市長がセクハラ疑惑で辞任、昨年9月には忠清南道の安熙正(アン・ヒジョン)前知事が、元秘書への性的暴行の罪で懲役3年6カ月の実刑判決を受けた。いずれも与党「共に民主党」の重鎮で、彼らを訴えたセクハラ被害者はみな職を失っている。

 少し古いが、2013年にソウル新聞が行った調査によると、アルバイトの90%以上がパワハラを受けた経験を持っていた。雇用主によるものが最も多く、客、上司と続いた。ソウル新聞は「甲乙問題」として取り上げた。

 「甲乙」は、異常なまでに上下関係を重視する慣習に起因する。財閥など企業オーナーの一族は「甲」として絶対的な権限を持つ。中間管理者はオーナー家の前では「乙」だが、自分より肩書きが低い社員の前では「甲」となって権限を振りかざす。社長第一主義の韓国では、オーナー家や社長は絶対で、逆らうことは許されず、まずは社長の言動に、次に上司の言動に気を配り、細心の注意を払わなければならない。

 韓国では企業や商店で、取引先や利用客に横柄な態度を取る例は少なくないが、社員や店員にとって取引先や客は二の次、三の次。客を社長や上司から受けた暴言のはけ口にすることすら珍しくない。

 社員は社長や上司に対して責任は負うが、客や会社に対してはその必要はない。

ナッツ姫も水かけ姫も
ナッツ姫

 2014年12月に起きたナッツ・リターンも「甲乙」に起因する。韓進グループ会長の長女で大韓航空の副社長だった趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏は、米ニューヨークの空港で自社旅客機の客室乗務員のナッツの出し方に腹を立て、滑走路に向かっていた機体を引き返させて客室サービス責任者を降機させた。

 航空法上、乗客にすぎない副社長が飛行機を引き返させる権限はない。大韓航空は機内サービスの責任を担う副社長の指摘を受けて、権限を持つ機長が判断したと言葉を濁した。オーナー家のわがままには黙って従う方が、社員のリスクが小さいからだ。国土部の調査担当は大韓航空の出身者で構成され、また大韓航空は国土部職員の天下り先だ。大韓航空の言い分を鵜呑みにする形式的な調査で終わるはずだったが、事件がSNSで広がると、世論の声を受けた調査委員会は綿密な調査を行って航空保安法上の航空機航路変更などの罪で趙顕娥氏を逮捕・起訴した。

 18年には“ナッツ姫”の実妹の趙顕旻(チョ・ヒョンミン)氏がパワハラ事件を起こした。大韓航空の広告担当専務だった趙顕旻氏は、会議中に自分の質問に対する明確な回答がなかったとして広告代理店の職員に暴言を吐き、水が入ったコップを投げつけた。この“水かけ姫”の事件もSNSで広がり、暴行の疑いで捜査が入った。

 自らを“甲”と考える財閥オーナー家3代目のパワハラは何も大韓航空に限ったことではない。大手企業等の創業者は苦労して会社を大きくし、2代目は親を見て育ったが、3代目は子供の頃から王族のごとくもてなされて傍若無人になりやすい。2017年1月にはハンファ財閥グループ会長の3男が飲み屋で暴力事件を起こして逮捕されている。

前政権の約束を反故にする大統領と同じ
ナッツ姫の妹・水かけ姫

 会社では“乙”に甘んじる従業員も自分より立場が弱い相手の前では“甲”になる。乳業会社大手・南陽乳業の営業社員は、在庫を代理店主に押しつけながら暴言を吐き、酒造会社ペサンミョン酒家の代理店主は会社からの買い取り要求で増えた借金を苦に自殺した。

 韓国企業と取引する日本企業は一方的な契約破棄に頭を抱えるが、これもまた「甲乙」に起因する。

 組織のトップが直接指揮した契約は、組織一丸となって履行に務める。もっともこれは、契約相手や会社に対する責任からではない。約束を守らない人だというレッテルを貼られて後ろ指を指されることを、“甲”のプライドが許さないからだ。

 また、新たに就任した役職者は、前任者が決めたことを反故にする。組織内のルールを変え、組織外と交わした契約をなかったことにして、自分に権限があることを目一杯アピールするのだ。

 これらは、韓国の大統領がたびたび口にする日本への謝意要求と本質は同じである。90年代、日韓両国の首脳や閣僚は今以上に両国を相互訪問した。日本の首相は訪韓すると、まず大統領に心からの反省と謝罪を述べ、訪日した大統領への第一声も反省と謝罪だった。日本の首相から反省と謝罪を受け取った大統領は、以後、謝罪を要求することはなかった。

 ところが大統領が変わると、前任者に述べられた謝罪はなかったことになり、再び謝罪要求を繰り返す。文政権は朴槿恵前政権が日本と交わした慰安婦合意を破棄し、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を口にする。

 政府や自治体、企業の役職者もまた、前政権の約束を率先して反故にする大統領を模倣するのだ。

「甲乙」は日常生活にも浸潤している。はじめて会った韓国人は、相手の年齢を聞きたがるのがそれだ。結果、年長者が甲となり、年少者は相手の言動に気を配る。

妊婦のお腹を殴る事件の背景にも
 2016年9月、ソウル地下鉄4号線で老人が優先席に座っていた妊婦のお腹を殴る事件が起きた。ソウルの地下鉄は各車両の両端に老弱者席が設置されているが、実態は高齢者専用席になっていて、着席している若い妊婦を高齢者が立たせる例は珍しくない。ソウルメトロは高齢者への啓蒙を断念し、老弱者から離れたところへ妊婦席を設置した。

 2014年11月7日にはソウル江南区の住宅地、狎鴎亭洞のマンションで50代の警備員が焼身自殺を図り、今年5月にも同様にマンションの警備員が自殺した。いずれも住民から継続して暴言や暴行を受け、鬱になって自殺したのだ。

 韓国ではパワハラを受けて鬱になる人が多く、鬱対策に取り組んでいる企業は少なくない。そもそもパワハラがなければ必要ない対策なのだが、パワハラの加害者は鬱対策の担当者にとっても上司にあたる。だから、トップのパワハラを諌めることはできず、被害者の鬱対策に精を出している。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月23日 掲載

新潮社

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