日本の東南アジアへの侵攻

◆日本の東南アジアへの侵攻

日本が大東亜戦争を戦った一番の目的は自衛のためであり、国家が生存するために不可欠な石油などの資源を獲得するためでした。しかし日本のためだけに東南アジアに侵攻したのでは、東南アジアを植民地として搾取してきた欧米列強と同類となってしまいます。そこで日本は東南アジアの解放を謳うことで東南アジアへの侵攻を正当化したと言えるでしょう。

有色人種が初めて白人を打ち破った日露戦争後は、アジア各地から多くの留学生が日本に集って学び、帰国を果たした後、自国にて民族自決の運動を展開しています。日本を中心に、「白人のためのアジア」ではなく「アジア諸民族のためのアジア」を目指す機運は、確実に高まっていました。ですからまずはじめに自存自衛という切羽詰まった目的があり、その目的を利するためにアジア解放の大義が掲げられたのです。欧米諸国の支配を断ち切り、アジアをアジア人に取り戻すために大東亜共栄圏を構築し、日本をリーダーとして欧米諸国に対抗しようとする構想は、日本の国益に直結していたのです。

開戦日に当たる1941年12月8日の新聞各紙に掲載されている「帝国政府声明」には、日本の戦争目的として自存自衛と並び、アジアの植民地を解放することが宣言されています。
「今回帝国は東南アジア地域に武力進攻せざるを得なくなったが、それは決して東南アジア住民に対して敵意を持つからではない。ただ、米英から東南アジア住民に対し加えられてきた暴政を排除し、東南アジアを白人によって植民地化される前の、明白なる本来在るべき姿へ戻し、ともに協力して繁栄することを願うからである。大日本帝国は東南アジアの住民たちがこの戦争目的を了解し、東亜に新たなる政治経済体制の構築を目差し共に行動することを疑わない」(『大東亜戦争の開戦目的は植民地解放だった―帝国政府声明の発掘』安濃豊著)

・アジア解放の理想と現実

日本は電光石火の勢いでアジアから欧米諸国の軍を追い出し、武力をもってアジアの解放を成し遂げました。その際、石油をはじめとする資源を本土に送り届けることが、なによりも優先されました。その一方、後回しとされたのが民族自決です。インドネシアには日本がもっとも欲していた石油資源があったため、マレー、スマトラ、ジャワ、セレベスは帝国領土とされ、インドネシアの独立は許されず、日本の領土に組み入れられたのです。

資源確保を優先する日本の統治は、欧米諸国による植民地支配よりも厳しかったとの証言も多々あります。戦時中は日本国内においても、国民の暮らしは困窮を極めました。列強を追い出した後のアジア諸国の管理が過酷を極めたことも、戦時下ゆえのやむを得ない面がありました。占領下の人々に我慢ばかりを強いたことにより、現地の人々の反発を招いたことも、否定できない事実です。

・なにがアジア解放をもたらしたのか

歴史は常に勝者によって紡がれます。第二次世界大戦に勝利した連合国側を正義、敗れた枢軸国側を悪として戦後の世界秩序がつくられました。日本を悪の帝国として位置づけるためには、日本の掲げたアジア解放の大義を否定する必要があります。そのために戦勝国側がこだわったのは、日本をアジア解放の殉教者としないことでした。そのためアジア解放の大義を含んだ「大東亜戦争」という呼称の使用がGHQによって禁じられ、「太平洋戦争」という言葉に置き換えられたのです。「日本はアジアを侵略したのであって、解放したのではない」それが戦勝国によって確定された世界共通の歴史認識です。

教科書でも戦後の植民地の独立について次のように説明されています。「アジア・アフリカなどの枢軸国の占領地域で民族主義運動が高まった。この民族主義運動はファシズム諸国の過酷な支配に対する抵抗運動として始まったのであるが、戦後、欧米諸国に対する植民地の解放運動にかたちを変えた」(『新・もういちど読む山川世界史』木谷勤著 山川出版社)

軍事力に優れていたとはいえ、少数に過ぎない白人による植民地支配が可能だったのは、その地に暮らすアジアの人々が従順だったからです。白人には適わないというあきらめの境地が、植民地支配を支えていた原理でした。
ところが、半神の如く君臨していた白人をあっという間に追い出したのは、彼らと同じ黄色人種に過ぎない日本人でした。それを目にしたアジアの民衆は、黄色人種も白人も同じ人間に過ぎないことをはじめて知ります。日本の圧倒的な勝利は、数百年間にわたって植民地を支配していた「被支配者としての従順さ」をものの見事に粉砕しました。日本の勝利は、アジアに暮らす人々の意識を根底から変えました。大航海時代から続く「白人の優越」が雪崩を打って崩壊し、あらゆる人種が平等であるとする新たな理念が、多くのアジア人の心に灯りました。

高名な歴史家、ア-ノルド・J・トインビ-は、次のように語っています。
「第二次大戦において、日本人は日本のためと言うよりも、むしろ戦争によって利益を得た国のために、偉大なる歴史を残したと言わねばならない。その国々とは、日本の掲げた短命な理想である大東亜共栄圏に含まれていた国々である。日本人が歴史上に残した業績の意義は、西洋人以外の人類の面前において、アジアとアフリカを支配してきた西洋人が過去二百年の間に考えられていたような、不敗の半神でないことを明らかに示した点にある。イギリス人もフランス人もアメリカ人も、ともかく我々はみな将棋倒しにパタパタやられてしまった。そして最後にアメリカ人だけが軍事上の栄誉を保ちえたのである。他の三国は不面目な敗北を記録したことは、疑うべくもない。」(『世界が語る大東亜戦争と東京裁判―アジア・西欧諸国の指導者・識者たちの名言集』吉本貞昭著ハート出版)

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