ウィグル人権侵害批難声明 米国強制労働防止法案

米国でウイグル強制労働防止法が成立。

アメリカのバイデン大統領は、23日ウイグル強制労働防止法案に署名しました。強制労働で生産されたものではないと、企業が証明できる場合を除き、新疆ウイグル自治区からの輸入が禁止されることになります。
法案は今月、全会一致で上下両院を通過。民主党と共和党の間には大半の問題で大きな隔たりがありますが、対中国政策ではほぼ一致しているということです。一方中国外務省は同法について、「事実と真実を無視し、新疆ウイグル自治区の人権状況を悪意から中傷するものだ」とする声明を24日に出したということです。

有本
アメリカ議会の、前政権のときのウイグル人権法、今回も全会一致ということです。
普段アメリカ政治にもいろいろ問題はあるし、それが民主・共和両党の間には、相当深刻な対立がありますけれども、こういう時のアメリカ政治っていうものの迫力はやっぱりすごいなというふうに私は素直に敬意を表したいと思います。
それに引き替え日本の国会、何やってんだと思います。

今の国際社会、ウイグル強制労働の問題をめぐる各国政府議会の動き
・ 1月19日:アメリカ政府、「ジェノサイド」および「人道に対する罪」に認定。
・ 2月22日:カナダの議会が「ジェノサイド」に認定。
・ 2月26日:オランダ議会もやはり「ジェノサイド」に認定。
・ 3月22日:アメリカ・カナダ・イギリス・EUが一斉に制裁発表(G7の中で日本以外のすべての国)
・ 4月22日:イギリス議会が「ジェノサイド」に認定。
・ 5月 5日:ニュージーランド議会が「深刻な人権侵害だと非難する決議を採択」
・ 5月20日:リトアニアの議会「ジェノサイド」認定。
・ 5月26日:イタリアの議会「深刻な人権侵害」と非難する決議採択。
・ 6月10日:チェコの議会「ジェノサイド」及び「人道に対する罪」に認定。
・ 6月15日:ドイツ議会人権委員会「人道に対する罪」に認定。
・ 7月 8日:ベルギーの議会「ジェノサイドの深刻な危機」と「人道に対する罪」と非難する決議を採択。
・ 7月12日:アメリカ国務省は大量虐殺等の防止に関する議会向け報告書で「ジェノサイド」と明記。
・12月 8日:アメリカ下院「ウイグル強制労働防止法」を賛成428、反対1の圧倒的賛成多数で可決。
・12月16日:アメリカ上院が全会一致で可決。
・12月23日:「ウイグル強制労働防止法」が大統領の署名をもって成立。

日本は中国っていう国名まで抜いたような、そもそも腰抜けだった声明すら採択できず、それで12月になったらもう人権侵害って言葉さえも消したような、何を言いたいのか訳わかんないような声明さえも採択できないというのは、本当にひどいと思います。

アフメット
ここ3~4年間は、私たちに暗いニュースが多かったんです。
けれどもそういった中で、今年は今までにない、世界各国で一歩進んだ動きがちらほらありました。
年の初めの1月に、アメリカが数年間色々調べたけれど、結局どっからどう見ても間違いなく国際法上禁止されている大量虐殺、ジェノサイドに当たるという認定をして、その後年の締めくくりに、これをきっちり口で批難するだけではなく、きっちり裁く、正していくということで、一つけじめをつけた形で強制労働防止法というものを成立させた。
これに関して私たちは率直に喜んで、心強いパワーを頂いた印象です。
当事者だけではなくて、世界中の行政・議会・政府、あるいはいろんな専門家がいろいろと調べて、これはどこからどう見ても犯罪なので、放置してはいけないという声をあげている中で、ぜひそこに日本も加わってほしかったというのが率直な思いではあるんです。
もちろん日本の国会においても、今までにない大きな動きはありましたけれども、結果に結びつかなかったというのが残念だと思います。来年こそぜひまともな声をあげていただきたいというのが願いです。

有本
私から言わせれば、要するに本当にやる気のある人は、どこにもいなかったってことなんです。
結局いろんな議連を立ち上げる、いろんなグループを立ち上げる、そのために勉強したいからといってアフメットさんたちを呼ぶわけです。
結局自分たちのやってるアピールが大事だから、あっちのグループで呼ばれた、こっちのグループで呼ばれたってやるんだけど、最後誰も本気で国会で押し込もうとしないわけです。

もう一つは人権担当の補佐官を置いたのに、まだ中谷さんは誰とも会ってないんです。ウイグル人の人たちとも。
しかもアフメットさんはじめとして、皆日本国籍者です。民族はウイグル人だけれども、日本で勉強して、働いて、良き日本国民になってるんです。日本の国に尽くしてくれてるわけなのに、そういう人たちに会わないという理由が私には全く分からないです。

2021年の国際人権団体や国際法の専門家たちの動き。
・3月、人権、戦争犯罪、国際法の専門家50人以上が共同で執筆し、米国のシンクタンク、ニューラインズ戦略制作研究所が発表した報告書は、国際法上の「ジェノサイド(集団殺害)」そのものだと結論づけた。
・4月、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した報告書は、人道に対する罪を犯していると、中国が人道に対する罪を犯していると結論づけた。
・6月、アムネスティ・インターナショナルが、人道に対する罪を犯していると結論づけた報告書を発表。
・11月、米国のホロコースト博物館が、ジェノサイドを犯してしている可能性があると結論づけた報告書。
・12月、1年前から調査してきた英国を拠点とする独立委員会「ウイグル特別法廷」が、民族大量虐殺に相当するとの結論を下した。

有本
こうした民間の団体もいろんな発信をして調査をしているんです。
もちろん日本のアムネスティとかも、日本にいらっしゃるウイグル人のアフメットさん達ともいろんな発表したりしてます。だから日本の人権団体が何もしてないってことはないんですけれども、それにしては日本のどちらかというとリベラルなメディアなんか、この問題に対する扱いはやっぱり小さいと思います。

アフメット
この中でも特に重要なのは、人権団体がいろいろ報告書を出してきてるんですけど、それと違って国際法の専門家たちが独自に、情報がほとんど遮断されている中で、漏れてきたわずかな情報をもとに、いろんな衛星写真だったり、いろんな証言、その他内部文章とか、入手可能な情報を全部集めて、専門的な観点で調査分析をして、その上で国際法と照らし合わせた時にどうなのかと、法的な観点でまとめたのが、一番上の国際法の専門家50人以上が共同で執筆した報告書です。
これは1948年の国連ジェノサイド条約と照らし合わせたときに、どこが問題なのかという観点で報告書をまとめて発表しているんです。彼らが出した結論が非常に重要だと思います。
あとは11月に、アメリカのホロコースト博物館が出した報告書は非常に大きいと思います。
そして12月には1年間、いろんな専門家を交えて調査をしてきた民間の民主法廷に、ジェノサイドに相当するという結論を出している。

法律の専門家たちがこういう結論を出しているということは、行政としてしかるべき対策をとってくださいよという法的な根拠を示してるわけです。だからこれを無視して政治をやるというのは間違っていると思いますし、今欧米がこういったことも踏まえて、アメリカの強制労働防止法も、こういった動きを踏まえて政治判断をしているということなので、ぜひ日本の政治家にもこういったことも踏まえて、再度考え直していただきたいというふうに思います。

日本では北京オリンピックの前に決議ができませんでした。しかしアメリカは強制労働防止法ということが成立して、日本の企業も関係ある可能性があります。
日本も含めて世界中の企業、消費者とか含めて、ありとあらゆるところに影響が出ると思います。
この強制労働防止法というのが、去年成立したウイグル人権法よりも、さらに現実的な効果が期待できるものだと私たちは考えているんです。

強制労働の背景にあるのが、何百万という単位で想定されている、大量の強制収用という問題があるんです。そこと密接に絡んでる中で起きている犯罪行為の一つとして、大規模な強制労働というのが話題になっているわけです。これがなぜ存在し続けるのか、強制労働が何で無くならないのかというと、ビジネスが成り立つからです。
ビジネスが成り立つから、そこから利益を得てる側が止めようとしないわけです。これをなくすためには、ただ口先で止めろと言っても、現実的にはおそらく効果が出てこない。
これをやめさせるためには、ビジネスが成り立たないような条件を相手に突きつける。これが最も効果的で、唯一の解決方法だと思ってるんです。
そういった意味では今回アメリカが、どれが強制労働で、どれがそうじゃないのかということを、中国が情報を遮断して確認できないようにしてしまっている、現場確認ができない、検証ができない以上は、すべて強制労働の疑いがあるというふうに見做すしかないという、かなり広範囲でウイグルで作られたありとあらゆるものを強制労働の疑いがあるとみなして、絶対そうじゃないよということを言うんだったら、ちゃんと証明してくださいということを条件に加えているんです。

これが一つは強制労働の犠牲になっている多くのウイグル人の命、人権尊厳というものを救うのと同時に、自分が知らないうちに強制労働に加担してしまっているアメリカの企業・消費者・投資家、そういった人たちをその犯罪から救うものだと思うんです。
その一環で日本の企業も含めて、世界中のグローバール企業も、もちろん知ってたらそんなことに加担しないと思うんですけれども、知らず知らずに、サプライチェーンがかなり複雑なので、一次・二次・三次取引先まで調査しようとしても、中国の中での調査というのは限界があって、都合の悪いことを徹底してみせないというのがあるので、調査しようとしても限界がある、そういったなかで日本の企業、消費者も含めて、知らず知らずに犯罪行為に手を貸さない、加担しないということが強力な手段だと思います。
ぜひ執行されて、日本の企業も含めて、ありとあらゆるところにこういった犯罪から手を引いてくださいという強力なプレッシャー、メッセージを与えるものになると期待してます。
ほっといたらこういうことになるので、日本の行政としても企業の責任に任せるだけではなくて、対策をとっていくという方向に舵を切って、サプライチェーンの上での強制労働の解除というものを、もっと力強く進めていただきたいと思います。

有本
もうすでに法律が成立する前から、例えば日本企業で言うとユニクロが、俗に言うする新疆綿というコットンを使ったシャツかなんかをアメリカに輸出しようとしたら止められた。ようするにユニクロの新疆綿を使ったという製品は、アメリカには輸入できないんです
ちょっと勘違いをしてらっしゃる方もいるかもしれないんですけど、日本企業は中国に出て行って、作った製品をもっぱら中国から日本に輸出してきている、あるいは中国国内でマーケットに出しているというふうに思っていらっしゃるかもしれませんけど、実はかなりの部分をアメリカに輸出してるんです。
それぐらい企業の活動もかなり複雑になっていて、グローバル化してるんですけれども、日本企業の中国で生産している製品のかなりがアメリカに行ってるんです。そういう中では新疆ウイグル自治区で作って、しかも背景がきちっと証明されているもの以外は一切締め出すっていういうことを言われると、おそらく相当な日本企業は影響を受けると思います。
改めて今後日本企業の営業報告書、あるいは株主総会、そういう場面で株主の側も、中国での生産、人権侵害があるとされている、強制労働があるとされていることについて、企業としてどう考えるのか、どう対応するのかということを、株主側も日本の企業に対して突きつけていくべきかなというふうに思います。

自民党の総裁選の時にこの番組でも相当問題にしましたけれども、自民党総裁選の候補になった河野太郎さんの親族がやっている会社のことを随分問題しました。
日本端子の中国でのパートナー企業、これが不釣り合いに大きな企業で、例えばディスプレイでは、韓国のサムスンよりも大きなシェアを占めるくらいで、それほど大きな会社と非常に不釣り合いに合わせられてるんです。これはおそらくう河野洋平さんの親族の企業だからってことなんだけれども、この会社がウイグル人の強制労働を疑われるそのサプライチェーンの中に入ってるんです。結構上流の方にいるんです。アフメットさんたちもまとめて日本語に直して発表している資料の中にも入ってるんです。だから河野さんはきちんと表明されるべきだと思うし、近親者の企業ですから是正すべきことはしなければいけないです。
自民党で総理総裁をもし本当に目指されるのであれば、この問題がいい加減な形で通るというふうには思わない方がいいです。

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