特番『伊藤貫先生登場!その1 ~アメリカ政治の混乱、民主主義という政治イデオロギーの欠陥~』ゲスト:国際政治アナリスト 伊藤貫氏
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アメリカの税制度には、内部収益コード(IRC)というものがあり、IRCには501Cというものがあります。
この501Cに区分されるものは、非営利団体や慈善団体、宗教団体、教育機関、社会福祉団体、NGOということになり、大量の政治資金でも匿名になってしまうんです。
それで3年半前の2000年の大統領選挙の年に、アメリカ全体で使われた政治資金の3分の2が匿名政治資金だったんです。
要するに誰が出してるのかっていうのが突き止められるのは3分の1だけなんです。
なぜかって言うと、501Cを使っているからなんです。
例えば僕がウォールストリートのヘッジファンド業者だとします。
そして政治家を買収したいと思っているとします。
そして政治家を買収するのに100億円使いたい、100億円使って政治家を買収しようと思うと、僕はまず100億円を501Cに分類されてる慈善団体とか、財団とか、NGOとか、フェミニスト団体とか、環境団体とか、そういう立派な名前を掲げてる組織に移すわけです。
その団体を通じて自分がターゲットとしたい政治家のスーパーパックっていうものに入れるんです。
普通のアメリカの政治家は、ポリティカル・アクション・コミティ(PAC)という、政治的な活動を支援する組織を作れるんです。
そのPACにお金を出す人は、みんな自分の名前を出して入れます。
PACにお金を出す時は、確か1年に6000ドルか6500ドルぐらいの上限があって、それ以上は出せません。
ですから普通の政治資金規制法によって管理されてるPACに出すお金っていうのは、名前も分かるし、誰が誰にお金を出したかってのが分かるんです。
ところがアメリカの有力政治家のほとんどは、大統領だけじゃなくて、例えば議会の委員長だとか、小委員会の委員長レベルの人まで、みんなスーパーPACを持ってるんです。
スーパーPACっていうのは無制限なんです。
無制限にお金を受け取っていいわけです。
例えば僕がウォールストリートのヘッジファンド業者で、こいつとこいつとこいつを買収したいと思う場合、やっぱり委員長レベルか、小委員会の委員長レベルをターゲットにするわけです。
そういう人たちはスーパーPACを持っていますから、スーパーPAC、例えばフェミニスト団体とか、LGBTQに関する団体とか、環境問題に関する団体を通じて、それぞれ何十億円かずつ流すと全部匿名になるんです。
2000年の大統領選挙の年に、アメリカで流れたお金の3分の2は、こういう501Cを使って匿名にすることによって、政治家のスーパーPACの中に流してるんです。
そうすると問題は何かって言うと、今年はこういう501CとスーパーPACを使って、特定の政治家に数十億円、数百億円流し込むっていう比率が、7割になるだろうというふうに言われてるんです。
しかもこの3分の2、つまり66%か70%の匿名資金の3分の2は民主党に流れ込むんです。
だから匿名政治資金だけを見ると、民主党と共和党の比率っていうのは2対1なんです。
民主党が圧倒的に有利なんです。
民主党っていう政党のおかしなところは、民主党って庶民の味方だと、そして政治資金規制法には非常に厳しいと、良心的であると、そういうふうに宣伝してて、アメリカのマスコミはそういうふうに書くわけです。
だけどこの大量の匿名資金も、確か4年前の2000年の匿名資金っていうのは、確か1ビリオンダラー以上だから、1500億円以上だったんですけど、今年は多分2000億円に行くと思うんです。
とにかく政治資金に厳しい、それから潔癖であるということになってる民主党の政治家の方が、はるか共和党の2倍以上もらってるわけです。
結局アメリカ政治でおかしなことが起きるのは、こういうことがあるからだと思うんです。
例えばネオコンの連中がウクライナを使ってロシアを攻撃したいと、もしくはネオコンの連中がイラクは大量破壊兵器を製造しているということを理由に、アメリカを使って戦争させようと考えたとします。
ネオコンの連中と、先ほど申し上げましたウォールストリートの金融業者っていうのは、ものすごい緊密なネットワークがあるんです。
それでネオコンの連中がどっかの国を相手に戦争を仕掛けたいと思うと、自分たちの言うことを聞いて協力する、しかも1人で100億円とか200億円とかを動かせるようなヘッジファンド業者が、先ほど言いました内部収益コード(IRC)の501Cを経由して、スーパーPACにお金を流して、特定の政治家が数億円、数十億円も受け取っても、全部誰が出したかわからない。
そういうことで僕は、2003年のイラク戦争が起きたのは、非常に不自然だというふうに思ってるんです。
2008年にブッシュと、コンドリーザ・ライスが、グルジアとウクライナをNATOに入れると決断をしたのも、非常に不自然だと思うんです。
なんでかって言うと、当時2008年、国務省のロシア担当官とCIAのロシア担当官は、圧倒的多数がウクライナをNATOに入れるような決断をしないでくれと、そんなことすると大変なことになると言ってたんです。
現在CIAの長官をやっているウィリアム・バーンズは、彼は当時アメリカ政府の駐露大使だったんです。
彼はコンドリーザ・ライスにすぐレポートを書いて、ウクライナをNATOに入れるなどという決断をすると、それは決して越してはいけないレッドラインを超えることになる、要するに非常に危険だと、 ウクライナをNATOに入れるっていうのは、ロシアに対する宣戦布告と同じだと訴えたんです。
当時ドイツの首相だったメルケルも、ウクライナをNATOに入れようとすることは、ロシアと戦争するっていうことなんだというふうに言って反対したんです。
僕の言いたいのは、当時のCIAと国務省の外交政策エスタブリッシュメントが、ウクライナをNATOに入れるという決断をするならば、必ずロシアと戦争することになると言って反対したのに、それにもかわらずブッシュ大統領はそれを決断して、6年後ですか2014年にはビクトリア・ヌーランドが乗り込んでいって、キエフでクーデターをやってるんです。
西ウクライナにはアゾフ大隊とか、ライトセクター、つまりウクライナ民族主義運動家たちをバンデラ主義者って言うんですけれども、バンデラ主義者の団体・ライトセクターがあるんです。
ビクトリア・ヌーランドは、こういうアゾフ大隊とかライトセクターと一緒になって、2014年のクーデターを起こして、民主的な選挙で選ばれたヤヌコビッチを追放したんですけれども、これだってものすごく不自然なんです。
アメリカに住んでると、なんで2003年のイラク戦争、大量破壊兵器なんか持っていないのに、持ってる持ってるって言って、全くやる必要のない戦争をふっかけたんだと、それからなんで2008年にCIAも国務省もロシア担当官もみんな反対してるのに、ウクライナをNATOに入れるっていう決断をしたんだと、なんで2014年にウクライナに国務次官補のビクトリア・ヌーランドが乗り込んで、クーデターやらせるんだと不思議に思うんです。
要するにどう見てもロシアを戦争に追い込むためにやったとしか思えないんです。
そうするとあのイラク戦争にしても、あの2008年にしても、2014年にしても、キャリア官僚が決めたことじゃないんです。
要するにキャリアのロシア専門家は、そんなことやりたいと思ってないわけです。
それが全部大統領から来るわけです。
そうするとその大統領を動かしてのは誰だと疑問が浮かぶんです。
エコノミストという雑誌が紹介してるあるエピソードがあります。
エコノミストっていうのはずっとウクライナの味方している雑誌で、全く親露派ではないんですが、そんなエコノミストの記者が書いてるから本当だと思うんですけど次のようなエピソードなんです。
確かトランプ政権の時だと思いますけども、プーチン大統領が私は、クリントン、ブッシュ、オバマ、それからトランプと4人の大統領と1対1で議論して、最初はアメリカの大統領と何らかの合意に達すれば、米ロ関係は良くなるだろうというふうに思って、この4人の大統領を必死になって説得して、米ロの何らかの合意妥協点を見出したと言ってるんです。
ところがそういう議論をした後も、しばらく経つと全部ひっくり返されちゃうと。
アメリカのトップとロシアのトップが首脳会談して合意に達したんだから、それで問題が解決しただろうと思うと、全部いつの間にかアメリカ側で内部からひっくり返されてしまうんだと。
それでプーチンがわかったのは、アメリカ政府を指導してるのはアメリカの大統領じゃないんだということです。
ディープステートなんだとプーチンが言うわけです。
この前のタッカー・カールソンさんとのインタビューの時もちょっとそんなこと言ってました。
クリントンとかブッシュと合意に達しても、後で全部消されちゃうんだと。
そうするとやっぱりこれ陰謀説じゃなくて、影で動かしてるやつがいるわけ。
なんで陰で動かせるんだ、そんなにうまくいくんだと言うと、やっぱり秘密は、鍵は、アメリカで毎年流れる政治資金の3分の2は匿名だということなんです。
6割か7割の政治資金が匿名だったら、政治家が誰の言うこと聞いてるのかということなんです。
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