㉑徴用工訴訟問題

4-3 徴用工訴訟問題 「反日種族主義」より引用

徴用工訴訟問題を理解するためにはまず、徴用について理解しなければいけません。
1939年年9月から1945年8月15日までの約6年間、戦時中に日本に来て働いていた朝鮮人労務者は約73万人いたとされています。
徴用は朝鮮では、1944年9月から1945年4月頃までの約8ヶ月間実施され、法律が規定する強制的な動員方法でした。
徴用で日本に来た朝鮮人は10万人以下と推定されます。
徴用以前には、1939年9月から実施された「募集」と、1942年2月から始められた「官斡旋」という方法があり、官斡旋は、朝鮮総督府が行政組織を利用し、朝鮮人の日本渡航をより積極的に支援したものです。
募集と官斡旋には、法的強制力がありませんでした。つまり募集と官斡旋は、朝鮮人が自発的に「私が行きます」と意思表示をして日本に渡ってきたものでした。

戦時中の日本では、日本人の青年の大部分が戦争に徴用されていたので、労働力が極端に不足していました。
戦争遂行のためには石炭の増産が必要不可欠でしたが、炭鉱で働ける頑健な青壮年層が極端に不足していたため、労働力として朝鮮人を必要としたのです。
1940年を基準に当時の朝鮮人炭坑夫の平均賃金は、ソウルの男子の月給と比較した場合、紡績工の5.2倍、教師の4.6倍、会社員の3.5倍、銀行員の2.4倍でした。
1944年の朝鮮人炭坑夫の賃金は、日本人大卒事務職の2.2倍、巡査の3.7倍にもなります。
炭坑夫の賃金がこのように高かった理由は、それが今日で言う三K(きつい、きたない、危険)業種に該当したからです。
朝鮮での朝鮮人の賃金は、日本での日本人の賃金の半分くらいにしか過ぎませんでしたから、当時の朝鮮の青年たちにとって日本は一つの「ロマン」でした。
つまり、朝鮮人労務動員を全体的に見ると、基本的には自発的であり、強制的ではありませんでした。

炭鉱などの現場では、仕事も生活も基本的には日本人と朝鮮人との間で差別はなく、賃金は日本人同様基本的に成果給で正常に支給され、朝鮮にいる家族に送金することもできました。
仕事も朝鮮人炭坑夫は日本人と同じ所で作業をしていたと証言されています。
ですから朝鮮人だけ辛く危険な仕事をさせられたという事実はありません。

1939年から1945年まで、朝鮮人に対する何度かの調査がありました。
その結果を見ると、月給から食事代、貯金、税金などいくつかの項目を控除しても、月給の45%以上が現金で支給されています。
朝鮮人はこのお金で酒を呑んだり、朝鮮の女性のいる「特別慰安所」に出入りしたり、朝鮮にいる家族に送金したりしました。
こういう事実は、強制連行または強制労働を主張する研究者たちが発掘し、編纂し、出版したその資料集の中に見出すことができます。

①朴慶植氏著『朝鮮人強制連行の記録』

「強制連行説」は、1965年に日本の朝鮮大学校の教員・朴慶植氏が、『朝鮮人強制連行の記録』という本で、初めて主張した説です。当時進行していた韓日国交正常化交渉を阻止するためでした。
また朴慶植氏は、小学館の『日本大百科全書』の中の『朝鮮人強制連行』という項目の執筆を担当していますが、その中で「朝鮮総督府の官公吏・警察官および会社労務係らが一体となって暴力的に各事業所に強制連行した。それらは割当て動員数を満たすため昼夜を分かたず、畑仕事の最中や、勤務の帰りまでも待ち伏せしてむりやりに連行するなど「奴隷狩り」のような例が多かった。(中略)陸軍慰安婦として数万人の女性が女子挺身隊の名のもとに狩り立てられた」などと主張しています。
そこから始まった強制連行説は、今に至るまで最も強力な学界の通説となって残っています。
またそれは、韓国の政府機関、学校などの教育機関、言論界、文化界の全てに甚大な影響を与え、韓国国民の一般的常識として根づくまでに至りました。

朴慶植氏は北海道のある炭鉱の例を提示しました。
賃金を30円未満から130円以下まで20円間隔で6つに区分し、朝鮮人と日本人がそれぞれどのように分布しているのかを見せています。
この資料から朴慶植氏は、日本人のうち82%は50円以上の月給を貰っているが、朝鮮人は75%が50円未満である点に注目しました。そしてこれを根拠にして、民族的賃金差別を主張しました。
しかし朴慶植氏が引用したその資料の前項を見ると、同じ炭鉱で5年以上長期間勤務した日本人は、全体の31%でした。
しかし、5年以上勤務した朝鮮人は一人もいません。
勤続期間が2年以下の朝鮮人炭坑夫は89%でしたが、日本人では43%に過ぎませんでした。
賃金は成果給であり、技術つまり熟練は、経験を通してのみ体得されます。大部分の朝鮮人は2年の契約が終わると故郷に帰って行きました。朝鮮人と日本人の賃金の差は、このような勤続期間の差、経験と熟練度の差から発生しました。決して人為的な差別の結果ではなかったのです。

②1965年日韓請求権協定

1965年に結ばれた日韓請求権協定は、日本が韓国に対して無償3億ドル、有償2億ドルを供与することなどで、両国及びその国民の間の請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と確認する内容でした。
この協定により、戦時中などに生じた事由に基づく請求権は、いかなる主張もすることができないとしました。
当時の韓国の国家予算は3.5億ドル程度でしたので、合計5億ドルという金額は、韓国の国家予算の1.4倍になりますので、どれほど大きな支援であったかが分かります。

この供与したお金の中には、元徴用工たちへの賠償金も含まれていました。
日本側は賠償金を個人に払うべきかと韓国側に尋ねましたが、韓国側は政府が責任を持って処理すると答え、実際には“漢江の奇跡”と称されるインフラ整備などにつぎ込み、条約内容を長らく国民には明らかにしていませんでした。
徴用工の未払い賃金等もこれに含まれていたと公式に弁明したのが2009年になってからのことです。

③強制徴用労働者像

肋骨が浮き出るほど痩せこけ、奴隷のように働かされた朝鮮人が、どれほどの苦難を経験したのか、広く知らしめるこの写真は、新しい教育課程で出版された全8種の教科書のうちの7種の教科書に、強制徴用された、または強制労働をさせられた朝鮮人というタイトルで載っています。
2019年には、この写真が初等学校6年生の社会科教科書にも掲載されるようになりました。
しかしこの写真は、労務動員された朝鮮人とは全く関係がありません。1926年9月9日、日本の『旭川新聞』に掲載されたものです。
北海道を開拓する過程で土木建設現場に監禁されたまま、強制労働に苦しんだ日本人10人の写真であるということが証明されているのです。

しかしこの写真を基にしたと思われる強制徴用労働者像が韓国で、「強制徴用労働者像」として造られるようになりました。
これは全国民主労働組合総連盟(民労総)と韓国労働組合総連盟(韓労総)、韓国挺身隊問題対策協議会(略称「挺対協」)などが主導する「日帝下強制徴用労働者像設置推進委員会」によって行なわれています。
この銅像は2016年にソウルの龍山駅前に初めて建てられたあと、同じ年に仁川富平駅、済州と昌原にも建てられました。
2019年8月、大田市庁舎前の公園に「徴用工像」が設置され、訴訟問題のシンボル的存在として扱われるようになりました。
一方、大田市議の一人がフェイスブックを通じて像のモデルは日本人であると主張、像の制作者が名誉棄損を受けたとして訴訟を起こすに至りました。
2021年5月28日、地裁は1926年に日本の新聞に掲載された日本人労働者の写真を引き合いに出し、像と写真の労働者が似ており日本人がモデルと信じる相当の理由があるとして、徴用工像製作者の訴えを棄却しました。

④徴用工訴訟問題(2018年)

2018年10月30日、韓国の最高裁にあたる大法院は新日本製鉄(現日本製鉄)に対し、韓国人4人へ1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じました。
日本の徴用工への補償について、韓国政府は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」としてきましたが、大法院は日韓請求権協定で個人の請求権は消滅していないとしたため、日本政府は日韓関係の「法的基盤を根本から覆すもの」だとして強く反発しました。
当時の安倍晋三首相は「本件は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している。今般の判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ。日本政府としては毅然と対応する」と強調しました。
日韓請求権協定には、両国に紛争が起きた際は協議による解決を図り、解決しない場合は「仲裁」という手続きが定められています。
日本政府はこの手続きにより解決しない場合、国際司法裁判所への提訴も視野に入れています。

⑤韓国下級裁判所が大法院判決を否定する(2021年)

2021年6月7日、日本企業16社を相手取り損害賠償を求めた元徴用工らの訴訟で、ソウル中央地方裁判所は原告の訴えを却下する判決を言い渡しました。
判決は、日本が1965年の日韓請求権協定に基づいて提供した計5億ドルの支援が「“漢江の奇跡”と評される輝かしい経済成長に寄与した」としました。
日韓請求権協定は、日韓の請求権問題は「完全かつ最終的に解決される」としていますが、元徴用工らは日本の経済協力が少ないことなどを根拠に、日韓請求権協定で元徴用工の請求権は解決されなかったと主張しており、判決が日本の「寄与」に言及したのは、こうした主張を否定する根拠の一つとしたためとみられています。
2018年の大法院判決は、賠償命令は日韓請求権協定に違反しないとしましたが、今回の判決は、賠償を命じれば国際法である日韓請求権協定に違反しかねないと判断したものです。

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