元外事警察が「日本に潜伏する『外国のスパイ』の脅威ランキング」を暴露!

元外事警察が「日本に潜伏する『外国のスパイ』の脅威ランキング」を暴露!8位イスラエル「モサド」、7位韓国「国家情報院」…アメリカ「CIA」の意外な順位

現代ビジネス

 「日本は犯罪が少ない国として知られる一方、世界有数の『スパイ天国』でもあります。スパイ活動防止法のような法律もないため、刑法などの法令に触れなければスパイが逮捕されることがないのです」

 こう語るのは警視庁公安部外事課(通称:外事警察)に2000年代から所属し、「スパイハンター」として活動を続けてきた勝丸円覚氏だ。話題の本『諜・無法地帯 暗躍するスパイたち』の著者である勝丸氏によれば、様々な国のスパイが日本に入り込んで活動をしているという。

 では、どの国のスパイが日本にとって脅威となるのか。勝丸氏の経験を元に、ランキングを作成してもらった。

 10位はイギリス。映画『007』シリーズでもお馴染みのMI6(SIS=秘密情報部)が、世界で活動している。しかしイギリス政府の発表では、MI6の職員数は約3600人とそう多くない(アメリカのCIAは2万人以上)。

 「私のMI6に対するイメージは、CIAと違ってあまり日本には興味をもっていないのではないか、というものでした。現在、イギリスにとって日本は脅威となる存在ではないし、情報関心も他の国と比べるとそれほど強くない。とはいえ、在日のイギリス大使館には、MI6の日本支局があるようです。

 MI6は日本で古い歴史のあるイギリス大使館で、長い時間をかけて培ってきた基盤があるように思えます。日本には戦前から、イギリス関係の企業やイギリス人大学教授がいたので、そこから人脈を広げて協力者との関係も築いている印象です。日本に長く住んでいる学者や研究者など日本語が堪能なイギリス人を使って情報収集をしていると見ています」

 9位はアメリカ。世界で最も有名な情報組織であるCIA(中央情報局)が世界各国で情報収集や工作を行っている。ハリウッド映画にもたびたび登場することから、スパイといえばCIAというイメージを持っている人も多いだろう。

 「CIAは日本にいるアメリカ人の情報や、アメリカ大使館や外交官にからむ情報、アメリカ本土に影響を及ぼすような情報を集めています。軍内部や基地周辺は当然のこと、日本にいる一般市民や外資系企業、普通の民間企業にも協力者が入り込んでいるとみられます。さまざまな情報を徹底して収集しているのは確かであり、そういう意味で恐ろしさを感じていました。

 時々、CIAの副長官などの幹部が、官房副長官や警察庁幹部、公安調査庁幹部に会いに来ることもあります。軍用機で米軍基地に降り立って来日するので、まるで日本がアメリカの裏庭であるかのように、自由に出入りしている印象でした」

 8位はイスラエル。勝丸氏によれば「反ユダヤ思想の団体、人物、それを支援する日本人などを監視している」という。「世界最強」の呼び声が高い対外諜報機関「モサド」が有名だが……。

 「千代田区にあるイスラエル大使館にはモサドはいません。ただモサド機関員が日本の周辺国に駐在している場合もあり、必要に応じて日本に姿を見せます。たとえば渋谷区にあるユダヤ教の会堂(シナゴーグ)に不審な外国人が接触してきた時には、モサドが来日して対応していました」

 7位は韓国だった。イギリスやアメリカと同じく、日本にとっては友好国ではあるが、脅威になる可能性があるという。その理由は、「韓国のスパイは荒っぽく、日本国内で誘拐や拉致を起こす可能性があるから」だ。

 実際、1973年には韓国の民主運動家だった金大中が、東京でKCIA(韓国中央情報部)に拉致される事件も起きている。KCIAはその後、国家情報院(国情院)へと名前を変えている。

情報収集だけでなく、暗殺工作も

 「日本で拉致事件を起こした歴史があることから、日本の古株の公安警察のなかには、いまも韓国は信用できないと言っている者もいます。国情院の情報機関員に聞いたところによると、実はいまも、国情院は韓国国内においてスパイ容疑で捜査が必要とあれば、ワゴン車を使って関係者を連行して取り調べる、といいます。

 韓国は、日本に住んでいる北朝鮮人である『土台人』やスリーパーの情報、さらに北朝鮮の資金調達の動きにも関心を持っています。朝鮮学校や朝鮮総連の情報も把握し、膨大なデータベースを持っています」

 日本にとって脅威となる「外国のスパイ」ランキング、6位はトルコだ。そもそもトルコの情報機関員が日本にいるということ自体が意外かもしれないが、トルコも国家情報機構(MIT)という能力の高い情報機関を有しているのだ。

 「2023年4月にはMITが過激派組織IS(いわゆるイスラム国)のリーダーをシリアで暗殺したと、トルコ政府が発表しています。MITは情報収集のみならず、暗殺工作も実施しているのです。

 そんなMIT機関員は在日トルコ大使館にも来ていました。トルコに対して敵対的な考え方を持っている人はもちろん、自国民も監視の対象です。トルコの悪口を言っている自国民を見つけて『このままだと本国に帰れなくなる』と脅すこともあります」

 たとえ友好国であっても、陰ではさまざまな情報を収集し、時には実力行使に出るのが「スパイ」なのだ。

「日本に潜伏する『外国のスパイ』の脅威」ランキング!3位北朝鮮の「スリーパー」、2位「KGBの後継組織」が暗躍する「ロシア」より危険な「納得の1位」の国名

 5位はパキスタン。日本との関わりは薄いように思えるが、実は重要な任務を担っているのだという。

 「パキスタンには『国家の中の国家』と呼ばれるほど強力な情報機関、ISI(軍統合情報局)があります。ISIは外交官の身分ではない大使館職員として勤務をしており、主に日本のパキスタン人コミュニティを監視するのが仕事です。たとえば日本で高級車を盗み、バラバラにしてアフリカなどに輸出する犯行グループがおり、グループの実態やその資金の流れがISIの監視の対象となっています。

 そうした活動の裏で、彼らには別のミッションもあります。核開発を続けるパキスタンのために、なんと日本の核技術に関する情報を狙っているのです」

 4位はイラン。日本国内のムスリムや、イランにとっての反体制派の監視が主なミッションだが、手段を選ばず実力行使に出る恐れがあるのだという。

 「1991年に小説『悪魔の詩』を日本語に翻訳した筑波大学の助教授が、大学内のエレベーターホールで刺殺される事件が起きました。この本はイスラム教の創始者・ムハンマドを揶揄するような内容で、イランの最高指導者ホメイニ師は著者と発行に関わった者に死刑を宣告していました。

 この事件には、イランの情報機関が関与していた可能性があると言われています。計画から実行、逃走、出国まですべて1人でやれるとは考えられませんし、殺害の方法も明らかに訓練を受けたプロの仕業でした」

 日本にとって脅威となる外国のスパイ、3位は北朝鮮だ。かつては30万人ほどの在日北朝鮮人がおり、日本国内でも活発なスパイ活動が行われていた。

 「北朝鮮にいる将軍様のために、日本や韓国に潜入しているのが『スリーパー』です。彼らには情報収集だけでなく、いざ将軍様が立ち上がれと指令を出した際に一気に蜂起し、鉄道や発電所、ダムなどのインフラを攻撃するミッションが与えられています。

 ただ、スリーパーも高齢化が進んでおり、若い世代では密命を受けている人は少ないと見ています。また2002年に北朝鮮が日本人の拉致を認めた事実は重く、北朝鮮に絶望して国籍を韓国に変えた人も多くいます。北朝鮮のために立ち上がろうと思う人が減ることで、スリーパーも減少したのです。

 とはいえ経済制裁によって外貨獲得の手段が限られている北朝鮮は、スパイを使いながら国家として犯罪行為に手を染めています。デビットカードやクレジットカードの詐欺や、サイバー攻撃でビットコインを強奪するなど、金集めに必死です。外交官さえも金がなく、酒やたばこにDVDの密輸や密売、偽札作りに手を染める者もいる。その意味では脅威になりうるでしょう」

 2位はロシア。ソビエト連邦時代のKGB(国家保安委員会)は国外で情報活動や暗殺などの工作に関与し、冷戦時代にはCIAと世界中でスパイ合戦を繰り広げた。国内でも秘密警察の役割を担い、軍の監視まで行っていた。

 KGBは1991年に解散したものの、プーチン大統領は元KGBのスパイであり、側近にもKGB出身者が多い。現在はFSB(連邦保安庁)、SVR(対外情報庁)、GRU(軍参謀本部情報総局)の3つがKGBの後継組織として存在している。

ロシアスパイの「手口」
 「FSB、SVR、GRUはいずれも日本支局を持っています。FSBは海上保安庁や海上自衛隊の装備を中心に情報を収集。SVRは日本の最先端技術を狙い、世論工作も行う。そしてGRUは軍事情報を集めています。3つの組織のスパイは麻布の大使館本館だけでなく、高輪の大使館別館にもいます」

 ロシアのスパイというと、外国人だとすぐ見分けがつくと思いがちだろう。しかし実際にはアジア系の血が入ったロシア人もいるため、一見してロシア人とわからないことも多いという。

 「私の知る限りでも、ロシアのオペレーションは年間で2つ3つは潰してきました。彼らは業界イベントや講演会でいろいろな人に接触し、重要度の低い情報を求めるところから関係を築く。そして『お配りしたのが余ってしまって……』などと言いながらQUOカードを渡したり、『経費で落ちるので大丈夫です』と言って食事を奢ったりする。ちょっとずつ相手の心の扉を開けていき、情報をとっていくのです」

 実際、40歳代の元ソフトバンク社員が営業秘密をロシア人に渡し報酬を受け取っていた事件が発覚したり、東芝の最先端技術が流出したりと、ロシアスパイによる被害は相次いでいる。この時に盗まれた東芝の技術は、ロシアがウクライナで使用しているミサイル誘導システムに使われている可能性もあるという。

 さて「日本にとって脅威となる『外国のスパイ』ランキング」、1位はどの国が選ばれたのか……? 

 1位となったのは、中国だった。日本には中国のスパイがたくさんいる、と耳にしたことがある人も多いだろう。だが、その実態をつかむは容易ではない。

 「中国は情報機関員にも中国共産党系と人民解放軍系がいて、それぞれが独自のネットワークを築いて活動しています。常に『間に人をかませる』ため、指令がどこから出ているのかを把握するのも難しい。正確な数字はわかりませんが、少なくとも数万人規模の中国スパイが日本にいると推測されます。

 中国の情報機関の協力者であるスパイは、中華料理店で働く人、中国人留学生、企業に勤める中国人社員など、さまざまなパターンが考えられます。さらに中国から国籍を変えたオーストラリアやカナダの人などがスパイになっているケースもあります」

 2023年4月には、日本の電気機器メーカーに勤めていた中国人男性がスマート農業に関する情報を不正に持ち出し、中国企業の知人2人に送信していたことが発覚している。事件化したものは、氷山の一角にすぎない。日本の技術や国防関連の情報は、いまも中国スパイによって流出し続けている。

 勝丸氏は言う。

 「スパイがやりたい放題に動いている現実から、日本人は目をそらしてはいけないでしょう」

東京都内で「中国」の「通信傍受施設」の拠点が存在する「意外な場所」《住宅街に「巨大なアンテナ」を発見!》

住宅街に「大きなアンテナ」が…
中国政府の日本におけるスパイ工作では、こんな疑惑が各国大使館の情報機関関係者の間で話題になっていた。

中国大使館には、領事館以外にも関連施設がある。スパイ活動に関連するものとしては、先に述べた教育処はそのひとつだが、実はさらにもうひとつ注視すべき施設がある。東京都渋谷区にある、中国大使館恵比寿別館だ。

この別館については、もともとヨーロッパの情報関係者たちから出てきた話だった。ヨーロッパの中国大使館には必ず怪しい別館がセットで存在し、通信傍受を行っているはずだというのである。ヨーロッパでは、それが情報関係者らの間ではよく知られているらしい。日本でそれに相当するものが、この恵比寿別館だった。

そんな話は、中国を担当する外事警察でもそれまで聞いたことがなかった。そこで恵比寿別館を調べてみると、驚きの事実がわかった。住宅街にあるその敷地を上空から見てみると、案の定、大きなアンテナが確認できる。ところが、地上からそれを確認することはできない。やはり通信を傍受しているようで、普段は日本語も英語もできない外交官が、一日一回、一人で別館に現れるのが確認されている。

日本の警察もガサ入れしにくい

しかも特筆すべきは、そこから半径1キロ以内に、台北駐日経済文化代表処があることだ。この施設は中華民国駐日本代表処とも呼ばれている。日本と台湾には正式な外交関係はないが、日本と台湾は、民間の機関という名目でこの代表処を東京に設置し、外交代表機構として機能している。要するに、台湾の大使館のような機能を持つ施設である。

中国大使館の別館では、台湾の代表施設の通信を傍受している可能性がある。それと関連しているかどうかは確定できないが、近隣住民からは、恵比寿別館の周辺では時々テレビ画像が乱れるなどの通信障害も報告されているのだ。

そもそも恵比寿別館は、外交施設として登録していないため、別館という看板を掲げることは許されていない。それが勝手に、大使館関連施設だと看板を設置し、日本の外務省から何度も文書で抗議されている。ただそんな文書にも無視を決め込んでいる。なぜ勝手に看板を掲げているのかというと、実際には外交特権の不可侵権はその施設は対象にならないのに、特権があるかのように装うことで、威嚇をしているのだ。

もっとも、本当に通信の傍受をしているのなら、看板は掲げないほうがいいのではないかという見方もあるが、大使館の関連施設と看板が出されていることで、警察はガサ入れをしにくいという側面もある。その看板が、家宅捜索はできませんよ、というメッセージになっているのである。また、恵比寿別館のすぐ隣には中国の国営通信社の新華社もある。

外交官のスパイ活動が発覚

実はこれまでも建物の存在は確認されていたが、管轄警察署である渋谷警察署の外事担当がその施設の関係者にアポを取ろうとしても、いつも担当者が不在で、接触はすべて拒否されてきた。私がこの情報を入手したことによって、警察庁警備局と警視庁公安部は、恵比寿別館に対する監視体制を作ることになった。

2015年5月に発覚した「事件」では、在日中国大使館の一等書記官・李春光氏が日本でスパイ活動を行っていたことが明らかになった。彼は外交官の身分を偽り、外国人登録証明書を不正に更新するなどして、外国人登録法違反で起訴された。それがきっかけで、鹿野道彦元農林水産大臣ら日本政府内の要人たちが、李氏の口車に乗せられ、農産物や衣料品の対中輸出の特別枠を手に入れることができるという儲け話に引っ掛かってしまっていたことが発覚した。

しかし実際には、そんな儲け話は存在していなかった。それどころか、李氏の本来の目的は、日本の農業政策に中国の意向を影響させることだったことが明らかになった。この事件は日本と中国の外交関係に大きな影響を与えることになり、両国の信頼関係に亀裂を生じさせる結果となった。

日本政府は今後、外国の外交官による不正行為を防止するための対策を強化していく必要があると再認識させられる出来事だった。

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